テレビ朝日系「報道ステーション」は13日の生放送で、前身の報道番組「ニュースステーション」などで活躍した久米宏(くめ・ひろし)さんの訃報を長尺で伝え、活躍をしのんだ。
「報道ステーション」は久米さんの訃報が発表された同日を「特別版」として放送。ビルの立ち並ぶグラフィックの映像とサックスがメインの当時のテーマ曲で「ニュースステーション」のオープニングを再現して始まった。大越健介キャスターは冒頭、「時に厳しく、そして痛快に、縦横無尽のスタジオワークでニュースの本質に迫る姿は、テレビ報道の“革命児”そのものでした」としのんだ。
久米さんの「Nステ」での映像も多数放送。小木逸平アナは、ニュースステーション初代プロデューサーの早河洋会長の追悼コメントも読み上げた。
久米宏さんの「権力との向き合い方」と題した特集コーナーも。小木逸平アナは「政治のニュースの使い方をも変えていきました」と伝え、政治家と向き合う映像が次々流された。
87年に中曽根康弘内閣が防衛費の対GNP比1%枠撤廃を決定した際の映像では、「そのまま軍拡にはつながりませんが、平和国家のとりでであったことは間違いない。破った中曽根総理の名前は、我々は記憶の底にとどめておくべきだ、と私は思います」と強い口調でコメントした。
85年には、自民党の権力者だった金丸信幹事長(故人)へのインタビューで「私、個人的には中曽根さんという方、好きじゃないんですが、幹事長はお好きですか?」と直球質問。「嫌いなことは嫌い?」とかぶせ、金丸氏が「嫌いという…あんた、私に切り返し切り返し言うけど」とボヤいた。VTR後、スタジオの久米さんは「ご本人は嫌いとは言わないんですが、私の感触では相当、好きではないという感触」と話し、笑いを誘った。
88年に発覚したリクルート事件では、竹下登総理が退陣を迫られている状況について、CMに入る前に言及。「1億5000万円ももらう。特定の企業とそんなに癒着した人間が総理大臣でいて、フェアな政治ができるはずがない。小学生でもわかる理屈を国民は感じているということをお忘れなきように。8対5で巨人が勝っております。ますます腹を立てながら、コマーシャルの後もニュース」と、広島ファンの“怒り”も軽妙に織り交ぜた様子が映された。
01年の自民党総裁選の候補者討論会では、小泉純一郎氏、橋本龍太郎氏、亀井静香氏、麻生太郎氏とスタジオで対峙(たいじ)したことも。久米さんが、当時劣勢だった麻生氏に対して「物理的に勝てない、ということは子供が見ても明らかだと思うんですけど」とツッコミを入れ、麻生氏があきれたように首を振った。それでも久米さんが「失礼な質問だと思わない」と正統性を主張。亀井氏は「失礼だよあなた、帰ろうか」と麻生氏を手ぶりでうながして憤った。麻生氏も「この人は失礼な質問して、怒らせて、それを記事にしてるんでしょ」と続け、スタジオに緊張感が走った。久米さんが「僕は政治のこと、よく分からないんですよ」と一般目線での質問を強調すると、亀井氏は苦笑しながらも「分からんなら生意気なことやるなよ」と完全な“バトル”状態に。久米さんは折れずに「だから、絶対勝ち目がない戦いに出て行く人の気持ちが…裏に何があるのか、と思っちゃうんですよね」と応じ、亀井氏も「だからそれを下衆の勘繰りと言うのはそういうのだよ。最近、品が良くなったけど、今日はダメだな」と返すなど、激しいやりとりが回想された。
番組最終回の2日前、04年3月24日の放送では、久米さんがこれまでの政治家との対話を振り返り「僕は政治に関しては素人なんで、政治評論家が使うような言葉は使わないで、ごく普通の言葉でほとんどの政治家の方とはお話ししたんですけど、不思議なもので、僕が普通の言葉で聞くと、向こうの方も普通の言葉で話してくれるように努力をして話してくださったことが多かったように思って、非常に感謝しております。『政治を語る時には風俗を語るように語れ』という大宅壮一さんの言葉が、私の座右の銘であります」と向き合い方を語った場面も放送された。
久米さんは、1985年10月から2004年3月まで、同局系「ニュースステーション」のメインキャスターを務めた。分かりやすさと、歯に衣(きぬ)着せぬコメントで、それまでアナウンサーが与えられた原稿を読むスタイルが主流だったニュース番組に革命を起こした。18年半で放送回数4795回、平均視聴率14・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。
04年3月26日、最後の放送では、手酌のビールを一気に飲み干し、18年半の歴史に自ら幕を引いた。翌4月から、元テレビ朝日アナウンサーの古舘伊知郎がメインキャスターを務める後継番組「報道ステーション」がスタート。古舘が16年3月をもって降板すると、同局の富川悠太、小木逸平アナらがメインキャスターを務め、21年10月からは元NHKの大越氏がメインキャスターに就任した。
久米さんは1日、肺がんのため、81歳で亡くなった。所属事務所が13日、発表した。



