人間国宝の歌舞伎俳優片岡仁左衛門(82)が、「七月大歌舞伎」(同2~26日、東京・歌舞伎座)で、「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)」に出演する。忠臣蔵の物語を、後の6代将軍となる聡明(そうめい)な綱豊卿の視点で描いた。このほど日刊スポーツなどの取材に、綱豊卿に挑む思いを語った。
初役は80年で「無我夢中でした。(先輩俳優を)夢中で追いかけた」と振り返る。今回で14回目となる当たり役になり「だんだんと自分で役を作れるようになりました。今演じている綱豊は、人物の作り方は私特有の綱豊像になってきた」と言うまでになった。
回数を重ねても、台本を整理し、気持ちを掘り下げる作業は変わらない。「本を読み込み、こういうやり方もあるな、と思ったりします。毎日、毎回、新鮮な気持ちでつとめることが大事」と話した。
綱豊と赤穂浪士の富森助右衛門が本心を探り合うやりとりは、緊迫感があふれ、冷静な綱豊に感情の揺れが見える。気持ちの作り方を聞かれると「意識しなくてもそうなる」と即答し「お芝居はいろんな作り方があって、ドラマの起伏を考えてもっていくか、自分の気持ちでそうなっていくか。私は自分の気持ちからもっていく」と話した。
演じるたびに台本を整理するのは、より伝わることを考えているためでもある。忠臣蔵を知らない世代が増えていることも実感しており「ご存じなくても、理解してもらえるように」とした。
父で13代目仁左衛門さんとは同演目での共演はないが「やりとりしている父の姿が見える」と言う。さまざまな思い出と思い入れのある「御浜御殿綱豊卿」だ。綱豊卿の初役から45年以上、工夫と思いを重ね、進化し続けている。【小林千穂】
○…4月、5月は大阪松竹座でさよなら公演に出演した。「気持ちは昔のままだったけど、こんなに後引くもんかな」と疲れを見せながらも、「文化の拠点ができるというお話ですから、明るい方に向かっている」と前向きに語った。



