ソフトバンクが、レコード会社の老舗の「ビクターエンタテインメント」と「テイチクエンタテインメント」の2社を買収する方向で交渉していることが16日、明らかになった。ビクターとテイチクはともに現在、JVC・ケンウッド・ホールディングス傘下の音楽ソフト会社で、両社はサザンオールスターズ、SMAP、森進一、和田アキ子、故石原裕次郎さんら数多くのアーティストの音楽などを取り扱っている。かつて電機メーカーの傘下で成長した音楽産業も、時代の流れで大きく変容している。

 ソフトバンクによるビクター、テイチク買収交渉はすでに最終調整に入っているといわれ、月内にも基本合意、発表の見通しだ。ソフトバンクは2社の持つ豊富な音楽ソフトを、パソコンや携帯電話向けのインターネット配信に活用し、コンテンツビジネスを強化する狙いがあるとみられる。

 一方で、2社を傘下に持つJVCは業績低迷が続いており、財務体質の改善が急務になっている。その策として、音楽関連子会社を切り離し、中核事業であるビデオカメラの製造・販売などに経営資源を集中させる方針のようだ。ビクターをめぐっては、JVCが昨年にもゲームソフト大手のコナミと売却に向けた交渉を進めたが、合意に至らなかった。JVCは「本件は当社が発表したものではございません」としている。

 ビクターからCDなどを発売するサザンオールスターズの所属事務所アミューズは「直接報告を受けていないので、コメントはしかねます」としている。SMAPの所属するジャニーズ事務所も静観している。テイチクではこの日、都内で全国社員大会が行われ、冒頭で幹部が「何もお話しすることはありません」と話したという。

 ビクターは1927年(昭和2)、テイチクは34年の設立で、日本でも屈指の老舗レコード会社。今年52回となる日本レコード大賞では、「襟裳岬」(森進一)「雨の慕情」(八代亜紀)「UFO」(ピンク・レディー)「TUNAMI」(サザン)など両社で計9回の大賞を獲得している。

 [2010年4月17日8時0分

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