女優淡路恵子さんが11日午後5時24分、食道がんのため都内の病院で亡くなった。80歳だった。昨年7月に直腸に腫瘍が見つかり、摘出手術を受けた後も入院していた。淡路さんはSKD(松竹歌劇団)を経て女優となり、喜劇からシリアスまで幅広く活躍した。私生活では、事実婚だったフィリピン人歌手との別離、萬屋錦之介さんと結婚・離婚。萬屋さんの事務所倒産で多額の借金も背負った。4人の息子のうち三男が交通事故死、四男も自殺と波乱の半生だった。

 淡路さんは昨年4月からフジテレビ系のバラエティー番組「アウト×デラックス」にレギュラー出演。直後から体に異変を起こしていた。「目まいがして、ふらつく」などと訴えていたが、病院嫌いで検査を受けることを拒否していた。

 しかし、体重が32キロに落ちたこともあり、7月5日に診察を受け、直腸に腫瘍があったことが判明。同時に食道にも小さな腫瘍が見つかった。直腸についてはすぐに手術が必要だったが、肺活量が足りず全身麻酔ができないことが発覚。3日間の肺活量トレーニングを行い、同月10日に腫瘍を摘出する手術を受けた。ところが、がんは想像以上に進行していた。この日、取材対応した長男の俳優島英津夫(52)は「この時点で、『もって12月まで』と告げられました」と明かした。根治は難しく人工肛門で対処していたことも告白した。

 手術は成功したものの、淡路さんの体調は戻らなかった。それでも島らが看病を続け、友人のデヴィ夫人(73)も見舞いに訪れ、10月10日のTBS系特番「嵐を呼ぶあぶない熟女6」に病床から声のメッセージを寄せ、「忘れないでくださいね。そこへもう1度行って、座り込んでしゃべります。頑張って近いうちにお目にかかりますから」と復帰を誓っていた。しかし、当初から「体力的にも、場所からも手術が難しい」と判断されていた食道の腫瘍も大きくなり、同月20日ごろには水を飲んでも吐く状態に。衰弱は進み、この日早朝に容体が急変し、駆け付けた島が出演舞台のために病院を離れている間、事務所関係者に見守られながら息を引き取った。

 淡路さんは1949年(昭24)に黒沢明監督の映画「野良犬」でデビューした。翌50年にSKDに入団し、草笛光子らと共演。退団後は米映画「トコリの橋」に出演したり、東宝の「駅前シリーズ」に出演するなど、妖艶な魅力で活躍した。私生活では54年にフィリピン人歌手ビンボー・ダナオ氏と事実婚になり、長男の島と次男をもうけたが、65年に関係を解消。翌66年には歌舞伎俳優萬屋錦之介さん(享年64)と再婚し、三男と四男を出産した。しかし、錦之介さんの個人事務所倒産で13億円の借金を抱えた。筋無力症で倒れた錦之介さんに代わって、クラブのママをするなどして借金返済に奔走したが、87年に錦之介さんと淡路さんの親友だった女優甲にしきとの不倫が原因で離婚した。

 その3年後の90年には三男の俳優小川晃広さんがバイク事故で22歳で亡くなった。04年には淡路さん宅に窃盗に入った元俳優の四男を自ら刑事告訴して、四男は実刑判決を受けた。10年には四男が自宅で首つり自殺。妻として、母として苦難の連続だった。

 ここ10年は舞台を中心に活動していたが、最近は歯に衣(きぬ)着せぬ発言の説教キャラで再び人気に。バラエティー番組や探偵事務所のCMなどに登場していた。

 ◆淡路恵子(あわじ・けいこ)本名・井田綾子。1933年(昭8)7月17日、東京都生まれ。48年、SKDの養成学校、松竹音楽舞踊学校に入学。黒沢明監督に見いだされ、49年「野良犬」で映画デビューし、「駅前シリーズ」「社長シリーズ」などに出演。フィリピン人歌手ビンボー・ダナオと別離後、66年に萬屋錦之介と結婚して引退。87年の離婚後、女優に復帰。NHK「若い季節」や日本テレビ「男嫌い」、舞台「頭痛肩こり樋口一葉」など出演多数。最近は東京MX「5時に夢中!」のコメンテーターのほか、フジテレビ「アウト×デラックス」などバラエティー番組にも出演した。