劇団黒テントの創立メンバーで舞台、ドラマなどで活躍した俳優斎藤晴彦(さいとう・はるひこ)さんが亡くなったことが28日、分かった。73歳だった。27日に都内の自宅近くで倒れ、救急車で病院に搬送されたが、そのまま息を引き取った。死因は不明で、通夜、葬儀・告別式は未定。2年前に心不全で倒れたことがあったが、最近は舞台出演やミニコンサートを行うなど元気だったという。

 突然の死だった。斎藤さんは27日に都内の自宅近くの路上で突然倒れ、見つけた人が119番通報した。救急車で近くの病院に搬送されたが、治療のかいもなく、そのまま息を引き取った。所属の劇団黒テントによると、斎藤さんは1人暮らしで、劇団関係者が身元を確認したが、死因は不明。26日まで黒テントの舞台の稽古に普段通りに参加し、特に変わった様子はなかったという。

 斎藤さんは2年前にも自宅で倒れた経験があった。その時は自ら「具合が悪い」と119番通報。救急車で搬送され、一命を取り留めた。心不全の中等症と診断され、出演を予定していた舞台を降板した。その後、仕事に復帰。定期的に通院して治療を受けながら、今年4月には舞台に出演し、5月には自らのミニコンサートを行うなど元気だった。年内にも黒テント公演に出演する予定があったという。

 斎藤さんは1969年(昭44)に佐藤信氏らと旗揚げした劇団黒テントの創立メンバーで、アングラ演劇ブームをけん引した。85年にはKDD(現KDDI)のCMに出演。クラシック歌手役で国際電話を「トルコ行進曲」に合わせ、PRする替え歌を歌って話題になった。86年から2年間、日本テレビ系深夜番組「11PM」水曜日のメーン司会を務めた。

 舞台では故森光子さん主演の「放浪記」で劇作家菊田一夫を演じ、上演2000回の記念舞台にも共演した。森さんに心酔し、石川・山中温泉に建設された森光子記念館にも足を運ぶなどし、PRに協力した。

 温厚で誠実な人柄でも知られ、黒テントの代表を04年まで務め、俳優だけでなく演出も手掛けながら、若手俳優の育成にも力を入れていた。

 ◆斎藤晴彦(さいとう・はるひこ)1940年(昭15)7月30日、東京生まれ。早大卒。「劇団青俳」「発見の会」に所属後、劇団「黒テント」の創立メンバーに。代表作は「放浪記」の菊田一夫役や、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のテナルディエ役など。舞台以外にもドラマ、映画でも活躍した。