毎日新聞月曜朝刊、山田孝男さんの署名記事「風知草」で初めて知った。「神宮外苑 危うし」。
外苑南側の都市再開発で、ここ数年ちょっとした縁で学生時代以来、久しぶりに足を運んだ神宮球場は神宮第2球場と統合されて秩父宮ラグビー場と入れ替わる。エリアで公園面積が3・4ヘクタール減り、そこに超高層ビルが建つ。工期10年。
山田さんが〈これが丸の内や日比谷なら、そうですか-というだけの話だが〉と書く通り、ここは自然保護を義務づけられた風致地区。なのに驚くのは、その地区内の古木1900本の52%にあたる1000本を切り倒してしまうというのだ。
神宮球場への郷愁でこれを書いているわけではない。最近では東京ドームや甲子園もそうだが、神宮は学生野球連盟の申し合わせでイニングの間に必ず「アオダモ資源育成の会」からの映像をバックスクリーンに流している。アオダモは木製バットの最高素材。だが最近は北海道の自然林の減少などで枯渇。プロ、アマともアオダモバットを使っている選手は数えるほどだ。
球場の映像には、スコップを片手に10センチほどの苗木を次々に植えていく子どもたちの楽しそうな姿が流れる。だがアオダモが成木になるのは70年。この子たちが植樹した木からできたバットを手にすることはない。
一方で超高層ビルのため切られる古木は、外苑整備の1920年代に先達が植樹した木だから樹齢約100年。子どもたちは70年先を見据えて植樹し、大人たちは100年の古木を1000本切り倒す。いったい私たちは、どんな国土を次の世代、その次の世代に残すつもりでいるのだろうか。(毎週月曜日掲載)


