新型コロナウイルスの感染拡大で、東京都に4度目の緊急事態宣言が出されることが決まり、当初予定が延期され7月に行われるはずだった自民党の派閥パーティーが、また軒並み再延期になった。そんな中、宣言発令正式決定当日、7月8日の午前と午後、石破茂元幹事長が昨年まで会長を務めた水月会(石破派)と、岸田文雄前政調会長が率いる岸田派が、滑り込みのような形で都内のホテルでそれぞれ、会合を開いた。
コロナ禍前の自民党派閥のパーティーといえば、出席者の数を競い、立食形式の食事やお酒も出ていたが、風景は一変。出席者数は絞られ、所属議員の講演や紹介が行われ、1時間ほどで終了となった。
石破、岸田両氏は昨年秋の自民党総裁選で菅義偉首相に敗れた。石破氏は総裁選4連敗。影響力低下は否めないが、国民の人気がなくなったわけではない。岸田氏は「ポスト菅」を目指し、今後を見据えた権力闘争への参戦が取りざたされる安倍晋三前首相ら「3A」との接近も伝えられる。キーマンであることには変わりない。
自民党内での今後の身の振り方が注目される2人は、講演で同じようなことを口にした。自民党に向けられる目の厳しさと、「説明すること」の大事さだ。
石破氏は、自民党が敗北(歴代ワースト2の議席数)した7月4日の東京都議選で応援に回った際の有権者の雰囲気に触れ「冷めた感じがした。演説の後、何人かの方が寄って来られて『きちんと説明してくれよ』ということをおっしゃった。こういう時代だからだれがやっても難しく、困難なことは分かっているが、どうしてこういうことになるのか説明してくれという方がずいぶん大勢いた」と述べた。
「国民が求めているのは耳に心地いい話ではなく、世の中がどうなっているかを聞かせて欲しいということではないか」とも話し、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックにも触れ「何のためにやるのか。政権や自民党のためではなく、きれいごとかもしれないが世界平和のためではなかったか」とも訴えた。
岸田氏も都議選に触れ「国民の自民党を見る目は大変厳しい。コロナや五輪対応などさまざまな指摘があるが、政治とカネをはじめ自民党の体質、イメージに関わることも軽視はできない」とした上で「やるべきことをやるのは当然だが、国民の不安や不満に寄り添う政治の姿勢が求められる」「黙ってついてこいではなく、理念を語る言葉が必要だ」などと語った。
自戒を込めた思いでもあったと思うが、新型コロナ、オリンピックなどについて言葉は発するが、メッセージとして全く響かない菅首相への苦言に聞こえた。
実際、首相は本来なら国民に説明する場となるはずの記者会見やぶら下がり取材でも、聞かれたことにストレートに答えることが少ない。8日の会見でも、再質問を司会がさえぎる場面もあった。コロナ禍で東京大会を開く大義、ワクチン接種現場は本当に混乱していないのか…。聞きたいこと、知りたいことに、首相の説明はいつもどこか一方通行。国民とリアルの共有はなかなか実現しない。
ただ、石破、岸田両氏が正面切って首相を批判したわけではない。どこか物足りなさも感じた。
衆院選の前哨戦となる東京都議選で敗れた自民党。昨年9月の菅政権発足後、重要な選挙で連敗中で、衆院選を菅首相で戦えるのか、党内では意外に辛辣(しんらつ)な声も聞こえる。永田町にとって秋は政治の季節だが、今年は自民党総裁選と衆院選を控える。状況次第で自民党内政局が起きないとも限らない。
総裁選出馬経験者である石破、岸田両氏。秋の自民党総裁選にどう対応するのか、会合ではいずれも語らなかった。こちらは、秋に向けて自ら説明が必要になるテーマだ。


