選挙選最終日の町田市長選では各陣営が街頭演説で支持を訴えた(2022年2月19日撮影)
選挙選最終日の町田市長選では各陣営が街頭演説で支持を訴えた(2022年2月19日撮影)

永田町では、今日2月20日に投開票される地方選挙に熱い視線を注ぐ関係者が少なくない。長崎の県知事選と、東京都の町田市市長選。自治体も争点も異なるが、共通したテーマがある。それは「保守分裂」だ。

自民系の候補が複数出馬すれば、当然、自民系の票は割れる。もちろんともに野党系候補も出馬している。そんな中、保守系候補の間でどちらが勝つのか、そしてそれが選挙結果全般にどう影響するのか、そんな関心があるようだ。

自民党にとっては、昔なら「一大事」(自民党関係者)でもあった分裂選挙が、ここ最近では珍しいことではなくなっている。地方選もそうだし、昨年の衆院選でも保守分裂の選挙区があった。一方が出馬断念に追い込まれたケースもあったし、表向きは調整されていても、事実上分裂選挙になったケースもあった。

今回、長崎では現職と新人2人、計3人の戦いだが、自民党の県連は、前回支援した現職ではない新人を推薦。この動きに反発する一部県議らが現職の支援に回るねじれ現象に。このほか無所属新人も立候補している。

また町田市長選挙では、前回、自民などの支援で当選し、今回5選を目指す現職と、昨年まで自民党の東京都議を5期務めた新人が立候補。自民党はどちらにも推薦は出していない。選挙戦最終日の19日に取材に行ってみると、複数の自民党国会議員が新人の応援に入り、市政刷新を訴えていた。このほか、立憲民主党や共産党など5党が推薦する新人、日本維新の会公認の新人、諸派新人、無所属新人が出馬。計6人の戦いだ。

自民党といえば、最後はまとまる印象があるが、こと選挙に関しては最近は分裂やむなしのケースが増えた。地方組織の内部や、党本部と地方の間で意見がまとまらなかったりするためで、当選した方が追加で公認されるケースもある。長年、国会を見続けてきた人に聞くと、岸田文雄首相の「聞く力」に引っかけて「自民党内の『調整する力』が弱体化しているのではないか」との意見もあった。

そして20日に長崎と町田で結果が出た後には、「近年ない重大な保守分裂選挙」といわれる別の選挙が告示される。もともと保守地盤の石川県で、異例の「保守三分裂」の構図となる、2月24日告示の石川県知事選。同知事選の分裂選挙は約30年ぶりという。

出馬が予定される保守系候補は3人。文科相も務め、森喜朗元首相に近い元衆院議員の馳浩氏に、先日参院議員を辞職した山田修路氏。この2人は先日「安倍派」となった自民党最大派閥、清和政策研究会の出身で、同じ派閥の仲間同士だった間柄。馳氏には菅義偉前首相や高市早苗政調会長、河野太郎広報本部長ら自民党幹部が応援するほか、日本維新の会も推薦。一方、山田氏には馳氏と距離を置く地元の自民議員に加え、立憲民主党や社民党など野党の地元が支持するという、与野党を交えたねじれ構図。ここに「地元での知名度が高い」(政界関係者)という山野之義・金沢市長も立候補する。山野氏も保守系だ。この構図に、自民党は誰も推薦も支持もできず「自主投票」とせざるを得なかった。

規模は違えども、短期間のうちに地方で相次ぐ保守分裂選挙。「しこり」が残れば、夏に行われる参院選にも影響が及ぶ可能性もなくはない。今日20日に2つの選挙が終わった後、固唾(かたず)をのんで石川での推移を見守る政界関係者は、さらに増えそうな雲行き。投開票は3月13日だ。【中山知子】