高市早苗首相の就任以降、首相の動くところ動くところすべてがニュースだ。トランプ米大統領の横で、こぶしを突き上げながらジャンプした姿も、国会での所信表明演説や代表質問もそう。就任からまだ2週間あまりだが、女性初の内閣総理大臣への注目の高さというのは、高市首相のキャラクターも相まって、こういうことなんだろうなと感じている。
そんな中、7日に初めて臨んだ衆院予算委員会を前に、午前3時に始動して準備に当たったことが、大きな波紋を呼んだ。当日の委員会の質疑でも体調を気遣われたり、周囲の人の健康に与える影響への懸念を指摘されたり。高市首相自身は、前日の公務終了時に答弁書を手にすることができなかったとして、答弁書を事前に入念にチェックし自身でペン入れするルーティンに従い「答弁書に1度も目を通さないまま答弁するわけにいかなかった」と釈明する事態になった。議員宿舎の自室に設置されたファクスが「10枚送られたら紙が詰まる」と、信じられない事実もぶっちゃけた。
午前3時に始動し、ぶっ通しではないにしても午後5時すぎまで委員会に臨んだ高市首相は終盤、疲労の色もみえた。多くの関係者も合わせて、午前3時に始動せざるを得なかった背景がだんだん分かってくると、かねて指摘されてきた「国会質問の事前通告は2日前の正午」という申し合わせルールが、これまで必ずしも守られていなかった実態も蒸し返されている。
7日の予算委員会については5日に開催が正式に決まるイレギュラーな形で、前日の6日昼までに事前通告は行われていたようだ。それでも「午前3時出勤」問題は、高市首相のハードワークから、かねて必要性が叫ばれながら、なかなかトータル的には進んでいない「国会改革」の必要性に焦点が移ってきているようにも感じている。
「女性初の」と書いていて、思い出したことがある。高市首相は2018年10月、衆参を通じて女性初の衆院議院運営委員長に就任した。この委員会は、「国会改革」のあり方について与野党協議が行われる場でもある。
高市首相はこの時、就任早々、物議を醸した。国会改革をめぐる申し入れを受けた際に、自身の「改革案」を公表。この中に、委員会質疑の合理化や閣僚の答弁軽減などが含まれていたことで、野党が「野党の議論封じだ」と反発したため。議運の理事会が紛糾し、その後予定された本会議が1時間近く開会時間が遅れるハプニングを招いた。
この時は、案に記された肩書や日付を削除することに高市首相が応じ、事実上撤回したことで野党は納得した。今回の午前3時出勤問題も、背景には、首相や閣僚が予算委員会では7時間張り付きで委員会に出席し、特に首相に関してはさまざまな答弁に応じなくてはならないという、答弁にかかる負担の大きさも影響しているように感じる。
首相が予算委員会などで与野党の質問に応じる様子は、NHKで生中継も放送される。質問している議員だけでなくその背後には国民がおり、首相の発言が大事なのは間違いない。それでも、予算委員会は7時間。その間、1問も質問を受けないでも座っていなくてはならない閣僚も多い。
かつて超党派の「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」事務局長を務め、議運委員長時代の高市首相に国会改革案を提出したのは、当時自民党厚労部会長だった小泉進次郎防衛相だ。紙資料をなくすペーパーレス化やIT化などに加え、進次郎氏が訴えたことは、首相や閣僚の拘束時間の長さ。2023年10月の衆院予算委員会では、当時の上川陽子外相への質問がない中、上川氏が予算委員会に出席しているとして「国際情勢が不透明な中、外務大臣がずっと座っている必要があるのか」と述べ、別の講演では「我々が変えたいのはこの景色。1歩でもどんなに小さなことでも変えたい」と訴えていた。
ただ、質問が1つも飛ばなくても、予算委員会での全閣僚出席は今も続く。進次郎氏自身も何度か答弁に立ったものの7日の衆院予算委員会は7時間、席に座っていた。国民にも見えるような形での「国会改革」は、道半ばなのが現状だと感じる。
高市首相は「私はこれまで(大臣時代も含めて)役所のレクというのは受けていない。答弁書をいただいて、自分で読む」と、国会答弁内容に強いこだわりを持っていると明かし、自分でペンを入れ、内容を直していくとも述べていた。ただでさえハードワークが指摘される中、今回の「午前3時出勤」は、かなりのレアケースだとしても、国会質問に臨む高市首相の真剣さが国民に示された。そして、質問の事前通告の問題もあらためて表舞台に出されてきた。今後は、質問する側も、より、申し合わせのルール厳守を意識しなければならなくなるだろう。
高市首相のハードワーク問題は、「国会改革」に目を向ける1つのきっかけにはなったのかもしれない。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


