本当に目を疑うような光景だった。6日に行われた社民党の党首選挙結果を受けた、福島瑞穂党首(70)の記者会見。ともに選挙を戦った大椿裕子元参院議員(52)、副党首のラサール石井参院議員(70)に、ひとこと感想を求める記者の質問が、事務方により却下され、候補者を平等に扱うよう求めた大椿氏の主張も受け入れられず、大椿氏が手元の資料をバサッという音を立ててまとめ、立ち上がって会場を出て行ってしまった展開は、多くのメディアで取り上げられた通りだ。
言うまでもなく、花束まで用意された新党首選出の晴れの場。普通なら、党のだれかが、退出する大椿氏に声をかけてもよさそうなのだが、その様子を見たままだれも止めない社民党。大政党で党内のゴタゴタが白日の下にさらされるのは何度も取材で目にしてきたが、社民党は所属議員が今や2人。「党内亀裂」と記事には書いたが、なんだか内輪もめ。党再生に向けてイメージを上げる場になるはずだと勝手に思っていたが、逆に落とすようなことをしてしまっては、元も子もないだろうに。
一連の流れに反発する記者らと、頑として応じない党側のやりとりは、怒号も飛び交う修羅場に。何より問題なのは、党首続投が決まった福島氏がとりなすこともなく、その場で何も言及しなかったことだ。2日後の定例会見で福島氏は、2人に発言の機会が与えられず、自分も求めなかったのは選挙管理委員会の仕切りに従ったまでとの主張を繰り返し、自身は「配慮が足りなかった」と謝罪の意を示したが、後の祭りだった。
社民党で福島氏は多くの期間、党首を務めてきた。以前は土井たか子氏や村山富市氏ら、衆院議長や総理大臣も務めた大物から、離党して民主党に移った辻元清美氏らまでさまざまな顔ぶれがいたが、今は福島氏以外の「党の顔」がいないこともあってか、すっかり「福島党」になってしまった感がある。福島氏は2013年参院選での議席減の責任をとり党首を1度退いたが、2020年の返り咲き後は無投票再選が続いたことも大きいだろう。今回、複数候補による選挙になったのは、福島氏が1度退任した際の13年以来13年ぶり。選挙のたびに所属議員が減り規模が小さくなってしまった党にあって、今回の党首選は今後に向けた姿を見せる1つのチャンスだったはずだった。福島氏の再選はもちろん党員の意思が反映されたものだが、5000人余しかない有権者の中にあって、1回目の投票は122票、決選投票では115票と一定数の無効票があったことも気になった。
福島氏と大椿氏の対立は、野党分裂で自民党に議席を奪われたさきの衆院選沖縄2区をめぐる候補者擁立が要因に挙げられ、今もくすぶったままだ。敗者の発言の有無は別にして、党首選や代表選の勝者が、ともに戦った候補者と、胸の内は別にしてとりあえず「ノーサイド」をアピールしてみせるのは、真の権力闘争となる自民党や中道改革連合の前身の民主党でも、いつも行われること。福島氏は、取材に行った時も国会内ですれ違ったりした時も、いつも丁寧に対応してくれる政治家の1人なのだが、自分の見せ方には思いが至っていたとしても、今いちばん求められる党の「見せ方」「見え方」にどこまで思いをはせていたのだろうか。
社民党に限らず、現在の野党には、強い個性の党首のリーダーシップのもとに集う形という意味で、「一枚看板」といわれる政党が少なくない。ナンバー2の榛葉賀津也幹事長との絶妙のコンビで知られる国民民主党の玉木雄一郎代表もその1人。今秋に代表選を控えるが、5日の党大会後の会見でこのことを問われた玉木氏は「党内に多用な人材がいると言うことを知っていただく、いい機会であることは間違いない。若手でもしっかりしている議員が非常に多く、いい人材がいることを知っていただく機会として機能すればと思っている」と述べていた。
同じ「1枚看板」でも国民民主のように」数や幅広い世代の議員がいればまだ、若手の発掘や世代間それぞれのアピールが可能になる。数がないとそれさえできず、人気が高い党首に頼って、それがまずまず「個人商店」的側面を強めてしまう。今回、党首選をへて起きた社民党の内輪もめトラブルは、「国政政党は、『お山の大将』1人では限界がある、ということをの裏返し」(永田町関係者)ともいえる。
社民党は国会議員がそもそも、福島氏と昨年の参院選で初当選した同年代のラサール石井氏の2人しかいない。政治の動きはメディアで報じられるだけでなく、内容次第ではSNSで炎上する時代だ。党の中ではトップにいても、国会全体でみると、花形とされる予算委員会などでの質問もかなわず、存在感を失っている。小さな土俵上で押し合いへし合いをしている場合じゃないのではないかと、今回の事態を目にしただれもが思ったはずだ。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


