4月に102歳で亡くなっていた直木賞作家の佐藤愛子さんは、90歳を超えて再ブレークという、極めて珍しい足跡を残した。「戦いすんで日が暮れて」が直木賞を受賞したのは69年。57年前だった。それが92歳だった16年8月に出版したエッセー集「九十歳。何がめでたい」が、17年オリコン年間BOOKランキング1位を獲得するなど、累計売上117・7万部(オリコン調べ。5月18日付)という、大ベストセラーとなった。同作は24年には、草笛光子主演で映画化もされた。
当時の佐藤さんは「いったいこれはなんなのか、誰かに教えてもらいたい」と、不思議に感じていた。さらに「特に新しいことを考えて書いたわけじゃない。昔から憎まれ口が定番で、何をいまさらという感じがする。率直に物が言えない時代、私のような好き放題言う人間が珍しかったのかもしれません」と続けた。
「最後の長編小説」と銘打った「晩鐘」を書き上げた後、鬱々とした気分で過ごしていたとき、週刊誌「女性セブン」から連載の依頼が来たという。「それを書き始めたら元気が出た。やっぱり私は書いていると機嫌がいいんだと分かった」。
さかのぼれば50年に発表した「青い果実」なども代表作だった。それが「九十歳。何がめでたい」以降も、19年「気がつけば、終着駅」、21年「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」、23年「思い出の屑籠」、26年「ぼけていく私」(杉山桃子、杉山響子と共著)などヒット作を世に出し続けた。80年近くも第一線で活躍し続けた。90歳以降の作品も、読者からの反響はすさまじかった。佐藤さんは「痛快!痛快! とっても元気が出ました」や「残りの人生を楽しく笑って過ごしたい」などと話していた。子どもから高齢者まで、大勢の読者が佐藤さんの文章に酔い、笑い、励まされた。

