【ロサンゼルス27日=千歳香奈子通信員】世界に広がる反トランプの動きが、米最高峰の映画賞にまで波及した。今年のアカデミー賞の外国語映画賞候補作「セールスマン」に主演しているイラン人女優タラネ・アリシュスティ(33)がトランプ大統領(70)に抗議し、2月の発表・授賞式をボイコットすると表明。トランプ氏は近くイランなど7カ国の国民へのビザ発給停止を指示する大統領令に署名する見通し。昨年のカンヌ映画祭で2冠を獲得した「セールスマン」は最有力候補作とみられている。

 アリシュスティは自身のツイッターで「トランプ氏のイラン人へのビザ発給停止は人種差別です。文化イベントへの出席者にも適用されるかどうかにかかわらず、抗議のためアカデミー賞への出席を辞退します」とツイートした。

 トランプ氏は、テロの恐れを理由に、イラン、イラク、シリア、イエメン、リビア、ソマリア、スーダンの中東、アフリカ7カ国の国民に対する入国ビザの発給を30日間停止する措置を検討。近く発給停止を指示する大統領令に署名するとみられており、これに反発した形だ。

 「セールスマン」は、2012年「別離」でイランに初のアカデミー賞をもたらしたアスガー・ファルハディ監督の作品で、昨年のカンヌ国際映画祭で主演男優賞と脚本賞の2冠を獲得。ミュンヘン国際映画賞では最優秀作品賞を受賞した。「ヒトラーの忘れもの」(デンマーク)など最終候補に残る5作品の中でオスカー最有力とみられている。

 アカデミー賞の授賞式は2月26日、ハリウッドのドルビー劇場で行われる。今年は主演男優賞候補のデンゼル・ワシントン(62)ら過去最多の6人の黒人俳優がノミネート。主演女優賞候補にはゴールデン・グローブ賞の授賞式でトランプ氏に抗議し、トランプ氏がツイッターで「彼女はハリウッドで最も過大評価された女優の1人だ」と反撃したメリル・ストリープ(67)も名を連ねる。毎年世界が注目する華やかな授賞式だが、今年は出席者らからトランプ氏批判が相次ぐ可能性もある。