スイスのバーゼル大学を始めとして5つの大学と1つの有名研究所が、孫や他人の世話をする高齢者は長生きするということを、昨年12月に発表した。孫の世話をしなかった祖父母グループ、孫の世話をした祖父母グループ、子どもや孫はいないが他人の世話をしたグループなどに分類して調査。血縁の有無にかかわらず、他者の世話をした高齢者は、世話をしなかった高齢者より長生きであることが分かった。

 人の世話をする時は、オキシトシンという幸せホルモンが出て若返るのだ。孫を抱く時も、ペットを触る時も、この幸せホルモンが出る。人のためと思っているうちに、回り回って自分を元気にしているのだ。

・おばあさん仮説

 「おばあさん仮説」という言葉がある。哺乳類のほとんどのメスは閉経後、死ぬ。しかし人間だけが現役が終わった後も長く生きる。それは、自分が子どもを産めなくなっても、自分が世話をすることによって、娘や嫁が次の子どもを産めるように、おばあさんが役に立っているからという仮説である。

・男も人のために生きよう

 じいさんはどうしたらいいのだろう。人の子どもの面倒をみることが、じいさんの役割かもしれない。ぼくと同じ年の山田和夫さんがやっている「要町あさやけ子ども食堂」。何十人もの子どもたちが集まってくる。山田さんは若々しくて、楽しそうだ。男は自分の子どもを育て終えたら、困難の中で生きている人の子どもに、ほんの少し手を差し伸べることで、自分も元気になる。これは鎌田が作った「じいさん仮説」。

 カリフォルニア大学バークリー校の発表によれば、愛情ホルモンや親切ホルモンとも言われているオキシトシンは、老化した筋肉の若返りをするという。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続けてきた。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。