将棋界初の「中学生五段」に昇段した藤井聡太五段（１５）が５日、大阪市の関西将棋会館で指された第６８期王将戦１次予選１回戦で南芳一九段（５４）を２３０手で破った。同２回戦で、師匠の杉本昌隆七段（４９）と公式戦初対戦する。五段昇段後、初の公式戦を白星で飾った。通算６２勝１１敗。

　自身の過去最長手（２１９手）を上回る２３０手の大熱戦。南は王将３期など通算タイトル保持７期の関西のベテランだが、形勢が不利になってもあきらめない。粘りに粘って大逆転勝利を収めた。「かなり苦しい展開だった」。終局後、珍しく「苦しい」を連発。五段昇段後の初勝利にも「特にない」とコメントを控えた。

　激戦を制し、師弟対決を実現させた。３月以降に同２回戦で激突する。藤井は「対局に臨むからには全力を尽くしたい」と静かな闘志を見せた。

　この日、師匠の杉本は６日の対局のため大阪入り。関西将棋会館を訪れ、愛弟子の対局を観戦した。「いつかは対戦すると思っていた。早かったという思いもあるが、公式戦での対局は弟子の成長を実感できるひとときになるはず」と喜んだ。

　小学４年で弟子入りした藤井少年を引き受けるとき、杉本は「引退」を覚悟した。「プロになるのは当たり前の子。ただ能力が高すぎるので別の道に進むこともあるかもしれない。そのときは将棋の魅力を伝えきれなかった自分のせい」。

　あれから５年。さらに将棋が大好きになった中学生が師匠に挑む。【松浦隆司】