金メダル、よくやった! 平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)スピードスケート女子500メートルを制した小平奈緒(31)。所属する相沢病院がある長野県松本市では18日、小平が「松本のおばあちゃん」と慕う滝沢偕子(ともこ)さん(87)が、自宅で熱い声援を送った。小平が女子団体追い抜きで銀メダルを獲得した10年バンクーバーオリンピック(五輪)後から、通院する同病院の相沢孝夫理事長(70)の紹介で知り合い、親交を深めてきた。来月で88歳。小平から少し早い「金メダル」の米寿祝いをもらった。

 「行け 小平」。滝沢さんは自宅の居間のテレビに応援の言葉を書き、ソファから声援した。平昌へ応援に行くつもりだったが「体調も考えて自宅で応援しました」。小平が平昌に出発する前、相沢病院を通じて手紙を渡した。「奈緒ちゃん、けがをしないで、病気にならないで、頑張ってね」。小平からもメッセージが届いた。「滝沢さんのおばあちゃん。3月4日のお誕生日には、米寿のお祝い、持って帰ります」。

 相沢理事長が滝沢さんのかかりつけ医だったことが、小平との“友人”関係のきっかけだ。小平が同病院に所属したのは09年4月16日付。その6日前の09年4月10日、相沢病院に入院していた夫忠寿さんを亡くした。82歳だった。「主人が亡くなりまして、私も体の調子を悪くしてしまった」。夫を失って初めての誕生日だった10年3月4日。相沢理事長の診察後、小平を紹介された。「小平さんがバンクーバー五輪の銀メダルを触らせてくれました。その後、お手紙のやりとりをするようになった」。

 手紙を出すと、必ずトレードマークの4つ葉のクローバーのマークが付いた、丁寧な手紙の返事があった。小平が遠征から帰国すると、会って話をした。長野市のエムウエーブまで、小平の応援に行ったことも。今では「滝沢さんのおばあちゃん」「奈緒ちゃん」と呼び合っている。ソチ五輪後、小平がオランダに修行に出た2年間も親交は続き、母の日にオランダから送ってくれた小さな陶器の風車は、自宅のテレビの横に大切に飾ってある。

 小平の魅力を聞くと「スケートにいちずで世界のトップ選手ですけど、本当はどっちかと言えば地味な方で、人間的にとっても優しい」と、柔らかい笑顔になった。「奈緒ちゃんのことを考えるだけで元気になります。まだまだ頑張らなくちゃ」と力を込めた。

 「奈緒ちゃんがけがなく頑張ってくれれば、メダルは何色でも良かったの。でも金メダルなんて。本当によくやったと伝えたい」。来月4日、最高の誕生日を迎えることになりそうだ。【清水優】