日本の台所と呼ばれた築地市場(東京都中央区)が6日正午、83年の歴史に幕を閉じた。関東大震災の被災を契機に、日本橋魚河岸から1935年(昭10)に築地に移転。そのバトンは今月11日から豊洲新市場(江東区)に引き継がれる。

移転延期で分断が最も大きかったのが仲卸業界だった。反対派の前面に立った「築地女将さん会」の山口タイさん(75)は「涙が出るほど悔しい。ここを壊されないように守る。明日からもここに居ます」。「樋徳商店」を経営する夫博司さん(78)は早大4年時から家業を手伝い、50年以上働いた築地の最後に、涙をこらえた。先日、フランス人記者に「エッフェル塔を壊すようなもんだ」と言われたという。「豊洲がもし汚染水問題などで使えなくなったらすぐ築地に戻る。だからここを壊しちゃダメだ」と訴えた。

東卸組合の執行部に名を連ね、対立する意見の調整に奔走した「山治」の山崎康弘社長(49)は「移転で50人の目利きが引退した。移転は我々の生活を一変させた。都には『世界一の市場をつくる』という気概をもっともってもらいたい」と厳しい表情で語った。