落語文化のさらなる発展に寄与しようと、自民党の国会議員を中心にした「落語を楽しみ、学ぶ国会議員の会」(落語議連)が設立され、20日、国会内で設立総会が開かれた。

会合には、落語界から柳家さん喬、春風亭昇太、立川談四楼、三遊亭円楽、桂米團治も出席。豪華な顔ぶれを招いての船出となった。

「寄席に行けなくても、『笑点』だけは必ず見ている」という遠藤利明元五輪相が、会長に就任。「まずは落語を楽しもうということ。ぜひ次の会からはみんなで寄席に、日本を明るく元気にしたい」とあいさつした。

政界随一の落語好きで知られる小泉進次郎厚労部会長は、「今日は奇跡的な瞬間」と感慨深げな表情をみせ、「私が演説を学びに寄席に行っていると思われているのは、大きな勘違い。政治の世界はストレスも多いが、心がささくれ立っている時も落語を聞いていると、世の中の何でも許してしまえる。世の中でうまい酒のひとつが、落語を聴いた後で飲む日本酒だ」と、魅力に触れた。「私の夢の1つは、将来賓客が来日した時、落語家や紙切りの方々が、これ、と言われて即興でパパパパパとやって、何なんだ、と。そういう姿を披露すると、外国の方にも驚かれるのではないか」と、落語のさらなる普及への夢も語った。

春風亭昇太は「本当にありがたい話だ。いろんな方に落語を楽しんでもらうのが、我々の願い。学ぶことは少ないが、なごやかに笑ってもらい、ストレス解消してほしい」と呼びかけた。

師匠だった立川談志が参院議員だった際、国会に通った経験を持つ立川談四楼は、当時を振り返り、「議員会館に入る際、手続きの紙の『目的』の欄に、『稽古』と書いた。芸名も当時は立川寸志で、いわゆるご祝儀の寸志だったので、十分に怪しまれ、稽古を『陳情』に直された」と、エピソードを披露。「今は国会内に『タリーズ』があってびっくりした」と、変化に驚いていた。

その上で「本当はもっと早くに設立されてもよかった。落語の『落』が落選の落につながるからと、ためらっていたのではないか」と、落選を嫌う国会議員の心情に引っかけて、再び笑いを誘った。

三遊亭円楽は「今の日本になくなった部分が、落語には残っている。日本人の心のふるさとがある。政治に生かせとは言わないが、教育に生かしてほしい」と要望。上方落語の桂米團治は「落語はどんどん江戸が主流派になっているが、上方も面白いことを発信したい」と呼びかけた。

 

議連はまず自民党議員だけで発足したが、今後は野党にも参加を呼びかけ、超党派での議連を目指す。会合後の取材で、いちばん最後に質疑に答えた柳家さん喬は、「ある国の方に、『すばらしい芸をみせていただいた』といわれたことがある。同時に、今、地球上ではいろんなことが行われているが、国の文化を理解すればきっと地球上から戦争が無くなるだろうとも言われた」と、エピソードを披露。

 

「(議員から)『超党派』という言葉もあったが、お互いに理解することが大事。相手を理解することによって、それが笑いにつながる。相手をくさしていては、笑いにつながらない。とても大切なことだ」と、国会の与野党対立をいさめるような、深い言葉を贈った。「すばらしい」との声を受けると、「まとめのさん喬と、いわれますから」と、最後まで笑いを忘れなかった。

 

議連のメンバーは来月、実際に寄席に足を運ぶ予定。会合後、所用で途中退席した桂米團治をのぞく4人は、進次郎氏の案内で国会内を見学して回った。