漫画家のちばてつやさん(80)が4月1日、文星芸大(宇都宮市)の学長に就任する。「漫画には読む人の心を動かし、勇気づける力があります。漫画には国境もない」と話すちばさんは「日本の芸術を発信する場所にしたい。どうすればそんな元気な大学にできるか考えています」と、学長として最初の大仕事となる8日の入学式に備えている。

文星芸大にマンガ専攻が創設された2005年から教授として孫ほど年が違う学生を教えてきた。1学年30人。教え子は400人を超え、プロの漫画家も巣立っている。「周りがみんな上手で、くじけてしまう子もいます。そんな子がふとしたきっかけで大きく変身して成長する。こんなにうれしいことはありません。教えることの喜びを感じます」。

現学長が体調を崩し、学長就任を打診された。「現役の漫画家で連載も持っている。戦争のことや引き揚げのつらい現実を書き残したいという気持ちがある」と固辞したが、副学長2人と名誉学長(現学長)が最大限サポートするのでと押し切られた。

大学運営、文科省との折衝、大学コンソーシアムと呼ばれる県内の大学・短大の会合、入学式、卒業式、学園祭、オープンキャンパスなどさまざまな仕事が待つ。「中国、韓国などからの留学生もいます。政治的にはいろいろありますが、漫画を通して仲良くできたらと思います」。学長就任後も講義は続ける。

任期は4年。来年は東京オリンピック(五輪)・パラリンピックで海外から多くの人が来日する。「日本の漫画が好きな人はたくさんいます。VRでいろんな漫画キャラクターが外国人を会場に案内したり、そういうことができる時代が来ています。漫画を楽しむ社会になればと思います」。

学長就任の日に発表される新元号については「世界中の平和を祈念するような2文字になれば」と願っている。【中嶋文明】

◆ちばてつや 本名・千葉徹弥。1939年(昭14)1月11日、東京生まれ。同年、朝鮮半島から満州に渡り、終戦後、大混乱の中、引き揚げた。56年、漫画家デビュー。代表作に「あしたのジョー」「のたり松太郎」。2012年、日本漫画家協会理事長。14年、文化功労者。現在、「ビッグコミック」に自身の半生を描く「ひねもすのたり日記」を連載している。

◆文星芸術大 1999年(平11)開学。美術学部のみの単科大でデザイン、マンガ、総合造形の3専攻がある。学生数246人。宇都宮市上戸4の8の15。