新1万円札の肖像に用いられることが決まった日本の資本主義の父とされる実業家の渋沢栄一の出身地、埼玉県深谷市は吉報に沸いた。

JR深谷駅前の渋沢栄一像を撮影する人が朝から続出した。スマートフォンで撮影していた深谷市の自営業男性(52)は以前、渋沢が新札肖像画候補に挙がりながらも、偽札防止の観点で、ヒゲがなかったことから落選したことに言及。「ヒゲがなくても関係なくお札になるって、やはりすごいんだなと思った」。「お小遣い稼ぎに、ネットで写真を販売する」という前橋市の無職男性(66)は朝、ニュースを見て、駆け付けたという。「売れると思ってね。急いできたよ」と、忙しそうに何度もシャッターを切った。

深谷市では小学校から道徳や郷土かるたなどで、渋沢の功績を教えていることから、子供から大人までの渋沢の認知度は100%と言っても過言ではない。

深谷市の主婦(49)は「深谷市以外ではあまり知られていなかったけど、私が生きているうちにお札になってくれて、うれしくて、朝から子供と一緒に大騒ぎしました」と声を弾ませた。渋沢について「功績がありすぎて、イマイチこれというものがないから、有名になりきれなかった」と推測。「深谷市は(イメージキャラクター)『ふっかちゃん』だけじゃない。新札の裏側は深谷のレンガを使った東京駅でしょ。1万円札の表も裏も深谷の象徴なんて、こんなにすごいことはない」と興奮気味。市の女子高生(15)は「銀行とか作ったスゴい人って、道徳で習いました。スゴ!って感じ」と喜んだ。

早速、“新札効果”を期待する声も上がっている。市のタクシー男性運転手(70)は「これからお客さんが来るといいね。恩恵に預かれるから」と期待した。市内の渋沢の生誕地「中の家(なかんち)」のスタッフは「普段の倍の来客で、ニュースを見て来た、というお客さんばかりでした」と説明。さらに「非常に光栄なこと。何回かお札の候補になりましたが、今回はヒゲはなくても偉人という扱いをしていただき、うれしいこと」と喜んだ。

一方、一報を受けて、市内の渋沢栄一記念館も通常より混雑したため、普段は中で遊んでいるという小学生らは館外でカードゲームをすることになる影響も。男子小学生(11)は「さすが偉人。僕も会社をいっぱい作りたい」と話した。