第25回参院選は21日、投開票された。自民党は、公明党とともに、改選過半数の63議席を獲得するのが確実になった。

一方、与野党対決となった1人区では、東北で野党候補と競り合い、苦戦を強いられた。立憲民主党は、改選の9議席を大幅に伸ばしたものの、結党直後の17年衆院選で起きたようなブームは再現できず、「安倍1強」を打ち砕く大勝には至らなかった。

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選挙戦直前に表面化した年金制度をめぐる「老後2000万円」の報告書問題や、イージス・アショアの配備計画をめぐる政府の不手際、トランプ米大統領との関税をめぐる「密約」疑惑…。数々の不祥事は、今回の選挙戦にも影響する可能性があったが、ふたを開ければ安倍自民は公明と合わせて改選議席の過半数63議席越え。首相が目標に掲げた数字をクリアした。

今回改選を迎えたのは、12年12月、政権交代で現在の安倍政権が発足後、初の国政選挙となった13年参院選で当選した議員たちだ。当時勢いに乗って65議席を獲得、野党時代の84議席は非改選を合わせて115議席へ躍進する圧勝だった。それだけに、今回は「逆バネ」がはたらくとの見方が強く、首相の目標設定が低いのは、責任論回避の狙いもあったとみられる。

首相は選挙戦で、旧民主党政権や野党統一候補の批判に多くの時間を費やした。立憲民主党の党名を「民主党」と発言。「毎回党名が変わると覚えられない」とたびたび攻撃した。自衛隊の位置づけや、公的年金をめぐる「マクロ経済スライド」への考えのずれを挙げ、「選挙が終わったらまたバラバラになり、また決められない政治になるのではないか」とののしり、一国の首相らしくない感情的な空気も醸し出した。

懸案の報告書問題にも触れたが、年金制度の安定性を強調。「政策次第では増やしていくことができるんです」と理解を求めた。ただ、今後は国民の厳しい目が注がれる。「老後2000万円」問題に絡んで野党が求めてきた、年金財政の健全性をチェックする5年に1度の「財政検証」の結果は、選挙前には公表されず、来月に発表される見通しだ。内容次第では、国民の年金不安を高める可能性もある。

野党の獲得議席が伸び悩んだこともあり、選挙前の逆風は、安倍自民に大きな足かせにはならなかった。首相は開票が始まる前の21日午後、盟友の麻生太郎財務相と会談。今後の政治日程について協議したとみられる。当初模索した衆参ダブル選挙を見送り、手堅く参院の議席固めを優先した首相は、21年9月までの党総裁任期満了までに衆院解散に踏み切るのか。「解散カード」を温存し、情勢を見極めるとみられる。【中山知子】