来春に「京都芸術大学」への名称変更を予定する京都造形芸術大学(左京区)と、中止を求める京都市立芸術大学(西京区)の対立は裁判に発展する可能性が濃厚となっている。前代未聞の騒動の行方について、専門家に聞いてみた。

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▽骨董通り法律事務所for the Arts代表で日大芸術学部客員教授の福井健策弁護士

これは不正競争防止法での争いでしょう。争点は、現時点で「京都芸術大学」「京都芸大」と聞いて人々がどこを連想するかです。市立芸大を指すならば、市立芸大を目指す受験生が旧造形芸術大に間違って出願したり、オープンキャンパスに行ったり、混同が起きるので、変更は違法となりやすいでしょう。両方とも指す状況ならば、不正競争は成り立ちません。このような場合、アンケート調査を証拠として提出することもあります。造形芸大は近年、さまざまな分野で頑張っていた印象があります。たとえ裁判で勝ってもうれしい結果とはならない可能性もありますので、「京都総合芸術大学」という落としどころはどうでしょう。名称変更の目的にかない、17学科の幅広さをアピールできるのではないでしょうか。

 

▽知的財産法が専門の学習院大法学部・横山久芳教授

この訴訟には2つの見方があります。「京都芸術大学」や「京都芸大」が市立芸大を指すものとして社会的に広く定着しているのであれば、造形芸大の校名変更は不正競争にあたるので、市立芸大の主張が認められるのではないか。一方「京都」や「芸術」という言葉は、京都に所在し、芸術の教育をしている学校であれば必然的なものなので、市立芸大が独占的に使用できるものではないとされる可能性もあります。微妙なケースのため、大阪地裁がどう判断するか分かりません。時間がかかる可能性もあります。商標登録については、「京都芸術大学」を造形芸大が先に出願しています。商標は先願主義ですが、「京都芸術大学」が市立芸大を指すものとして広く定着していると判断されれば、先に出願しても拒絶されることもあります。いずれにしても特許庁の判断が出るまで1年くらいかかります。