将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(17)が渡辺明王将(棋王・棋聖=35)への挑戦権獲得に向け、大一番を制した。21日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグで、羽生善治九段(49)を下した。ただ1人、無傷の2連勝だった羽生に土をつけ、3勝1敗とした。2018年2月の朝日杯オープン戦準決勝の初対決に続き、またしても勝利を手にした。

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積極的に踏み込んだ。後手番の藤井が、相手玉を左右から攻める。局面を複雑化して持ち時間を使わせようとする、羽生の勝負術にも動じない。「攻め合いに行かなければ成算はなかった」。しっかり寄せ切って貴重な1勝を挙げた後、ほおが紅潮していた。対する羽生からは、「一手一手、意味が深かった。指されてみて、なるほどと感じた」と評された。

将棋を覚えて間もない小学生時代、藤井にとってあこがれの存在だった。羽生の揮毫(きごう)が入った扇子を手にして、喜んでいた。デビュー半年後の2017年(平29)4月、インターネットテレビ局が企画した非公式戦で勝った。「すごい人が現れた」と羽生に言わしめた。公式戦初対決となった朝日杯でも白星を挙げている。この時は、「将来必ずタイトル戦に出てくる方」と、お墨付きをもらった。

その言葉を証明するのが、今回のリーグ戦。在籍7人中、藤井を除く6人全員がタイトル獲得経験者であり、名人もしくは名人戦挑戦権を争うA級在籍棋士。A級よりも3ランク下のC級1組にいる藤井にとって、実力を試すにはいい機会だ。羽生を倒したことで全勝が消え、挑戦権争いは混戦になってきた。

将棋界でのタイトル初挑戦最年少記録は、屋敷伸之現九段が1989年(平元)に達成した17歳10カ月。残り2局(相手は久保利明九段、広瀬章人竜王)とも勝てば、限りなく更新の可能性がある。「あと2局、全力を尽くしたい」。夢をたぐり寄せるため、挑み続けていく。【赤塚辰浩】