新型コロナウイルス感染防止でマスクが手放せなくなった状況に、聴覚障がい者や手話通訳者に不安が高まっている。顔の表情や口の動きがコミュニケーションの重要な要素だからだ。

コロナ関連のさまざまな会見では、手話通訳者だけがマスクをしていない。東京手話通訳等派遣センターは「手話は手の動きだけでなく、表情や口の動きも使って伝えます。顔の多くが覆われると、正確に伝わりにくくなります」と説明する。口元が透明なマスクやアクリル板なども検討しているが、会場照明の反射で見えにくい可能性などの問題もあり、試行錯誤中という。通訳者の安全も課題だが「別室からの配信などの方法も、主催者の体制の問題でもあるので」という。

聞こえない人、聞こえにくい人のすべてが、手話を理解しているわけではない。対面では口や表情の動きなどを読み取ってコミュニケーションする人々も少なくなく、日常生活のさまざまな場面で、マスクが大きな壁になりうる。

全日本ろうあ連盟は、危機管理対策本部を立ち上げた。全日本難聴者・中途失聴者団体連合会は自治体や医療機関などに対し、筆談対応や、相談窓口などの連絡先にFAX番号やメールアドレスを記載、手話通訳者へのマスクの提供、字幕の推進などを求めている。