コロナショックで臨時休業に追い込まれている碁会所など、「囲碁を楽しめる場所」を支援するクラウドファンディングが、5月1日から始まる。

手を挙げたのは、囲碁インストラクターで、会社を経営する長井多葉紗(たばさ)さん(37)。囲碁サロンを経営する白江徹一氏(48)や、囲碁ファンの会社経営者らに声を掛け、7都府県から16の道場やサロンが参加する。目標は300万円。6月半ばまで募り、分配する。コロナ対策と、終息後を見越しての布石だ。

外食産業などと同様に、囲碁を楽しめる場所もコロナ騒動で日に日に経営が悪化している。あるサロンは、3月になると週を追うごとに入場者が半減し続けたという。4月になり、国の緊急事態宣言がさらに追い打ちをかけた。

都内で2件のサロンを経営する人は「家賃やインストラクターの人件費などで、月々300万~400万円は必要。収入ゼロの状態ではとても厳しい」と説明する。夏にかけて企画した、アマ対象の囲碁のイベントや大会は軒並み中止。クラウドファンディングの話を同業者にしても、「道場を閉めることになる」「終息しても続けていく自信がない」などと断られるケースもあった。

慶大囲碁部出身で、衆院議員の小沢一郎(77)を教えたこともある長井さんはこう訴える。「ネット対局を楽しめる時代ですが、大事な伝統文化の灯は消せない。男女や年齢を問わず、いろいろな人がわいわい集まって話をしたりするのは、独特の貴重な空間。残していかなければならない」。人と人との「ご縁」ならぬ「碁縁」を強調した。

肝心の助成については、政府はすったもんだの末、ようやく国民に一律10万円の給付を表明した。各自治体も支援の額や速度に差がありすぎる。自営業の支援を始めたカナダや文化・芸術の活動の救済に手厚いドイツと比べれば、スピード感もない。

このプロジェクトには、日本棋院関西総本部、中部総本部も賛同。プロ棋士も50人ほど賛同し、芝野虎丸名人(20)や藤沢里菜女流立葵杯(21)、上野愛咲美女流本因坊(18)、村川大介十段(29)らタイトルホルダーも名を連ねる。

囲碁界は昨年、史上最年少プロの仲邑菫初段(11)がデビュー、秋には芝野が史上初の10代名人になるなど、世間の注目を集めるなど追い風も吹いた。彼らをはじめ、プロ棋士も最初は道場に通うなどして学んだ。その碁会所は減り続けて現在、全国600~700件程度とされる。コロナに屈しないよう、民間レベルで声を出して支援の輪を広げていくしかない。