岡山県倉敷市街地から車で30分ほどで鷲羽山(わしゅうざん)に到着する。日本初の国立公園として知られる瀬戸内海国立公園の代表的な景勝地で、わしが羽を広げた様子に似ていることから名付けられたと言われている。「日本の夕陽百選」にも選定されていると知り、日が傾き始めた頃に向かった。

太陽の沈む位置と瀬戸大橋の絡みが良さそうな場所を求め、歩き回った。第一展望台と第二展望台の間にある下津井節碑に行くと、沈みかける太陽のオレンジ色の光を受ける瀬戸大橋のシルエットが美しく、圧倒された。日が沈みきったのを見届けた後、児島市に住む片山敏晴さん(69)に声をかけられた。10代の頃から50年ちかく通っているそうだ。鷲羽山を訪れる人も減っているというが、片山さんは「人が少ない方がゆったりできていいけどね」と笑顔で話してくれた。

翌日、山口県内を少し周り、山口宇部空港から帰京した。預けていたカメラバッグを受け取ると、メッセージカードがついていて驚いた。大変な時期なのは空港職員の方も一緒なはずだ。人を思いやるおもてなしの心に胸を打たれ、温かい気持ちで帰路に就いた。【鈴木みどり】