自民党総裁選をめぐり、麻生派会長の麻生太郎財務相(79)、細田派の細田博之会長(76)、竹下派の竹下亘会長(73)が2日、合同会見を行い、菅義偉官房長官(71)支持を表明した。

党内最大派閥細田派(98人)、54人で第2勢力の竹下、麻生両派のトップが、合同で会見を開いたのは、今回の総裁選がいかに「派閥の論理」で進められているかを物語っている。以前の自民党派閥政治に戻ったような光景だ。

派閥トップがそろい踏みで会見するのは「聞いた事がない」(自民党関係者)事態という。背景には「菅内閣」発足をにらんで、早くも、人事やポスト獲得含みの主導権争いが始まっている、内輪の事情がある。

派閥として、菅氏支持をいち早く支持したのは二階俊博幹事長率いる二階派だ。「菅-二階ライン」はもともと良好で、菅総裁のもとで二階氏が幹事長を続投するとの見方も強い。幹事長は党ナンバー2で、人事やカネを一手に取り仕切る存在で、各派閥にとって「のどから手が出るほど欲しいポスト」(関係者)。16年8月の就任後、二階氏は剛腕幹事長として党内外ににらみを利かせている。

そんな二階氏が、「菅総裁」誕生への流れをつくり、今回他の派閥は先を越された格好になった。ある党関係者は「菅氏が新総裁に選ばれた後も二階氏が影響力を強めることに、焦りがあるはずだ。菅氏支持の流れをつくったのは二階氏なら、多くの議員を抱える自分たちが支持を決めたことで、菅氏優位を決定づけたという自負をアピールしたいのだろう」と、この日の3ボスそろい踏み会見を分析。「流れを決定づけたからには、人事での何かしらの『見返り』を求めたい、都合のよい思いが透けてしまっている」とも話す。

今回の会見について、二階派への事前連絡はなかったといい、今後を見据えた主導権争いからの「二階派外し」という側面もありそうだ。

自民党内では、すでに「ポスト菅」=菅官房長官の後継を筆頭に、主要ポストをめぐるさや当ても始まっており、細田、竹下、麻生各派のトップが意識していることは間違いない。総裁選での支持と見返りのポスト要求の「論功行賞」方式がいやでもちらつく3人の記者会見は、「古い自民党への先祖返り」(野党関係者)と、酷評されても仕方がない。