小型惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星「りゅうぐう」で採取し、地球に帰還したカプセルが8日、神奈川・相模原市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)に到着した。カプセルは6日、オーストラリア南部の砂漠地帯で回収された。7日夜、ビジネスジェット機「ファルコン(はやぶさ)」で現地を出発し、午前7時すぎに羽田空港に到着した。津田雄一プロジェクトマネジャーは「52・4億キロの旅をして帰ってきてくれた」と、興奮を抑えながら喜びに浸った。

りゅうぐうには、水が存在するという説が有力で、はやぶさ2は、表面と地下物質の両方を採取した可能性が高い。地下物質は強い太陽光や風、放射線にさらされておらず、太陽系誕生の起源や地球に生命が誕生した謎の解明に迫る貴重な「タイムカプセル」だ。津田PMらスタッフらは「竜宮の玉手箱」と名付けた。

おとぎ話では、乙姫さまから「開けてはいけない」とされた玉手箱を開けてしまった浦島太郎は、出てきたけむりで一瞬にして白髪の老人と化す。宇宙からの「玉手箱」も、すぐには開けてはいけない。宇宙に存在しない地球の大気に一瞬でも触れてしまうと変質し、約6年(2195日)をかけた貴重な試料が、だいなしとなる。

カプセル内のサンプルは真空下で開封、採取され、窒素環境で精密な成分分析を行う日本独自の最新技術で「早ければ、来週にも試料が入っているか、どうか分かる。チームは(100点満点で)1万点で届けてくれた。2万、3万点にできるように」(臼井寛裕地球外物質研究グループ長)と世界初の朗報は待つしかない。【大上悟】

▼小型惑星探査機「はやぶさ2」の試料分析によって太陽系誕生の起源、地球に生命が誕生した謎の解明に迫れる可能性がある。

太陽系は約46億年前誕生したとされ、小惑星は太陽系が誕生した太古の物質を多く含有しているとされる。はやぶさ2は、小惑星「りゅうぐう」に人工クレーターを形成し、地下物質も採取したと思われる。地下物質には生命の起源であるアミノ酸や水などの有機物が存在するとされる。その成分が地球に存在するものと同じか、近ければ、数多くの小惑星が地球に衝突して有機物をもたらした、とする仮説が、さらに有力となる。