コロナ時代に生き残る飲食店は、小規模なテークアウト専門店“セマミシュラン”だ!?

銀行のATMがキャッスレス化にともなって減少する中、アクセスの良い跡地を改装した店舗の新規オープンが相次いでいる。外食などの自粛モードが高まる中、イートインスペースを設けず、販売とわずかな作業場所のみで人件費や家賃も削減、効率化経営で売り上げを伸ばす。キーワードは、愛する(A)食べ物(T)持ち帰り(M)!

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JR浦和駅西口から徒歩30秒。2月11日に新規開店したサンドイッチ専門店「PANYA-SAN」が大盛況だ。ATM跡地だけに、メイン通りに接しているのは約2メートル幅のみ。ショーケースを構える販売スペースは、とても狭い。だが、駅近くや商業施設など人の集まる場所に設置されていたATMは、飲食店としても最高の立地。田村崇店長は「ATMだったことは偶然なのですが、人の行き来が多い場所がポイントだった。県庁が近いですし、通勤客も多いので、うまいこといったと思う」と分析した。

1番人気の「タマゴ」や「カツ」などの定番から「フルーツ」や「期間限定」まで、約20種類のサンドイッチが店頭に並ぶ。総菜パンを主にしている姉妹店で調理した食パンを輸送し、店舗では簡単な作業のみ。奥の作業スペースは人が1人通れるくらいで十分。イートインスペースもなく販売だけのため、消毒などのコロナ感染予防対策費も軽減されている。

営業時間は午前6時半からで、毎日約400食が売り切れる昼すぎには閉店。当初は木曜だった定休日も、売り上げ傾向を分析した判断で11月からは日曜に変更。「働く時間も効率的。早く来て、速く作業して、早く売り切って帰る。イートインがあるとダラダラ営業になってしまうが、メリハリは社員にも経営者にもプラス」と同店長。社員の士気も高まると同時に、人件費削減効果もある。

消費者側のニーズにも応えている。20代女性は「昼休みのランチも、ここを発見してライフスタイルが変わった。出勤前に買うのが楽しみの1つ。種類も多いので、その日の気分で選んでいます」。事業者も消費者も勝者となり得る「元ATMテークアウト店」が、コロナ経済打破の活路を見いだしそうだ。【鎌田直秀】

○…バナナジュース専門店「めっちゃバナナ熊谷店」は、埼玉・JR熊谷駅近くのショッピングモール内で8月7日にオープンした。店内には、サルのキャラクターが出迎える“インスタ映え”撮影スポットも。めっちゃ濃厚なエクアドル産バナナを使用し、砂糖は不使用。ケールや黒ごまなどのトッピングも豊富だ。タピオカに続くトレンドドリンクに名乗りを上げる。

○…食パン専門店「高匠」は、ガラス張りを残してATM跡地の雰囲気が残る。東急田園都市線や横浜市営地下鉄あざみ野駅から徒歩1分。商品は1本(2斤)税込み850円の「湯種食パンTokyoRich」と、バター各種など。客も1人ずつ入店せざるを得ない狭さだが、そのぶん1人当たりの購入時間は約1分と回転率は抜群だ。10月2日の開店以降、大忙しの原木冴佳店長は「ATMだったことを知っている方もたくさんいて、地域密着感もある。毎日欠かせない存在の店になりたい」と願った。

○…東京・戸越銀座商店街で3月に新規開店したプリン専門店「トミーズプリン工房」は、イタリアのおしゃれな雰囲気にあふれている。横長だったATM跡地を生かし、間口は広々。冨沢義教店長は「日本有数の商店街で食べ歩きの街。老若男女に好かれているスイーツが、コロナでご自宅用としても受け入れてもらえている」。常時6種ある商品は、湯煎による低温調理にこだわる究極食感の逸品だ。