将棋の第33期竜王戦7番勝負で挑戦者の羽生善治九段(50)を4勝1敗で破り、初防衛を果たした豊島将之竜王(30)の就位式が25日、東京・渋谷「セルリアンタワー東急ホテル」で行われた。今期は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ファンを招く500人規模の祝賀懇親パーティーはなし。関係者などを招くだけの式典とした。豊島は、「羽生さんが挑戦者になったことで事前から注目度の高さを感じていた。卓越した大局観と、常識にとらわれず可能性を見いだそうとする指し手は勉強になった。よい緊張感の中で戦えた。何年かたって思い返せるシリーズになった。来期の防衛戦に向けて、1日1日精進してまいりたい」と祝辞を述べた。

同時に、挑戦者を決めるランキング戦各組優勝者(1組=羽生善治九段、2組=佐々木勇気七段、3組=藤井聡太2冠、4組=石井健太郎六段、5組=梶浦宏隆六段、6組=高野智史五段)の表彰も行われた。

1組を制した羽生は、「緊急事態宣言下でも将棋を指せてありがたかった。途中、不手際で延期させてしまい、大変申し訳ありませんでした」と、7番勝負第3局(昨年11月7~8日、京都市「仁和寺」)終了後に発熱、入院のため、第4局(同月12~13日、福島市「吉川屋」)が延期となったことを謝罪した。

3組を制し、2017年(平29)のデビュー1年目に6組、以下18年5組、19年4組と優勝、史上初の4組連続優勝を果たした藤井2冠は、「今年も表彰式に参列できることをうれしく思います。竜王戦は決勝トーナメントで上へ行けてないので、少しでも上に行けるよう頑張りたい」と、決意を語った。すでに始まっている第34期では、2組優勝と、ストレートでの1組昇級に挑戦する。

過去にこのストレート昇級例は、1~5期の佐藤康光九段、8~12期の鈴木大介九段、15~19期の橋本崇載八段、21~25期の佐藤天彦九段と4人しかいない。しかも、すべて優勝での昇級例はなく、前人未到の記録がかかる。

ほかの各組優勝者のコメントは以下の通り。

6組高野五段 すごくうれしく思います。昨年、一昨年と昇級の一番で敗れた。来年もこの場に立てるよう、技術を磨いていきたい。

5組梶浦六段 (本戦トーナメントという)大きな舞台で指すのは初めてだった。久しぶりに連絡をくれる人もいて、竜王戦の大きさを感じた。今期もコツコツ頑張っていきます。

4組石井六段 32期は5組決勝で弟弟子(近藤誠也六段)に敗れた。悔しさをバネに頑張った。コロナの時期に将棋に集中できた。今後も一歩一歩、頑張っていきたい。

2組佐々木七段 今回で2回目の表彰。前回は羽生先生が永世七冠を獲得した第30期だった。2組は実力者や強豪ぞろいだったが、実力以上の力が出せての優勝でとても自信になった。気持ちも新たに頑張りたい。