藤井聡太王位(棋聖=18)に豊島将之竜王(叡王=31)が挑戦する、将棋の「お~いお茶杯第62期王位戦7番勝負」第1局(29、30日、名古屋市「名古屋能楽堂」)は、挑戦者の豊島が先勝した。以下は、「ひふみん」こと加藤一二三・九段(81)の「ひふみんアイ」です。

2日目の封じ手後手7六飛(48手目)で半歩リードした豊島さんが、そのまま隙を見せずにリードを広げ、完封勝ちしました。

屋台骨となったのは、3枚の歩です。まずは、58手目後手9七歩。研究していませんでした。54手目に後手9七歩成と攻め込み、先手同香後手9六歩先手同香とした後、敵陣に刷り込むような「垂らし歩」でした。これで拠点を作ると、62手目後手1三歩から飛車の交換を請求し、66手目後手3六歩は次の68手目後手4五桂とのセットで軽妙手でした。これが決め手でしょう。

藤井玉をお手本通り、「包むように寄せる」構図を実現させました。正直、この時点で勝負あり。「歩使いの妙」が光りました。

それから後手4五桂と飛び出せたのは、振り返って初日の40手目で後手3三桂と跳ねておいたことが大きいです。気付きませんでした。2枚の桂を活用できました。歩と桂という、将棋では価値の低い駒をうまく使いこなしての先勝劇でした。

一方、先手番で第1局を落とした藤井さんは、少し先行き不安です。先手の時の戦い方が相当研究されている感じです。相掛かり、角換わり、矢倉などの中から、「ウイニングショット」を見つけ出す必要があります。

これで通算1勝7敗と苦手の豊島さん相手に、1度リードされると押し切られてしまいそう。野球で言うなら、1点取ることすら難しい投手と相対するようなものです。互角に渡り合うには、相手の長所を研究しながら、作戦負けしないこと。序盤の駒組みについて修正していくことが必要です。

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