菅義偉首相の後継を決める自民党総裁選(17日告示、29日投開票)に出馬表明した岸田文雄前政調会長(64)が、日刊スポーツのインタビューに応じた。昨年の総裁選での惨敗を糧に「優柔不断」のイメージからの脱却を図り、党改革など積極的な姿勢と発言を続けている。イメチェンで発信力を強化し、混戦を制す。

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「優柔不断」「発信力が弱い」などネガティブなイメージからの脱却を図っている。積極的な発言も増した感があり、「岸田は終わった」とされた昨年9月の総裁選惨敗から巻き返す。

岸田氏 仲間たちから(発言について)いろいろと指摘を受け、端的に言い切る形に変えた。昨年は2週間ほどの短期決戦だったが今回は約5週間ある。特に党員・党友の方々に、ていねいな説明が必要だ。

イメチェンは随所にうかがえる。5日、ユーチューブで配信されたライブ番組で視聴者からの質問に応じた。「バナナはおやつか?」という問いに「バナナはおやつに含まれません」と即答した。これまでなら言葉に窮した可能性もあるが、「昭和30年代中ごろまでは輸入規制で大変、高価だった。病気にならないと食べさせてもらえない」などと、生真面目さにユーモアをまじえ、番組では大うけした。

岸田氏 バナナについて以前、調べたことがある。おやつじゃない(笑い)。

バナナだけに「一皮むけた」印象をアピールし、回答もすべらなかった。政策、公約では強気の姿勢も示している。総裁選情勢は相変わらず派閥の長老、実力者らによって左右されている。「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期まで。権力の集中を防ぎたい」と訴えた。5年以上も党幹事長の要職にある二階俊博氏をけん制したものとみられ、二階氏から「不快だ」と反発も受けた。

岸田氏 党のルール、制度として変えるべきだ。ひとつは若手の登用、自民党は新陳代謝ができる、変わっていける政党であることを示すことが重要だ。

新型コロナ対策や、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開催中に感染拡大した菅政権の反省点も挙げて批判する。

岸田氏 追加経済対策に30兆円程度は考えなくてはならない。原資は国債。消費税の増税は考えてない。東京五輪・パラリンピックは無観客開催の決定が遅かった。早ければ、準備や国民に説明ができた。

一方で、森友学園を巡る公文書改ざん問題について2日の政策会見では「さらなる説明が必要」としたが、7日の会見では一転「再調査は考えていない」と否定。当時の安倍晋三前首相への責任問題が再燃することへ忖度(そんたく)との疑念が残る。

負のイメージを一掃し、派閥を横断した議員票や党員・党友票を獲得できるかがカギになりそうだ。

野球では地元の広島カープの大ファン。

岸田氏 Aクラス入りは難しいかな。4位は確保してほしい。ともに大逆転を狙いたい。【大上悟】

◆岸田文雄(きしだ・ふみお)1957年(昭32)7月29日、東京都生まれ。早大卒。日本長期信用銀行勤務後、父・岸田文武衆院議員秘書を経て、93年衆院選で初当選し、9回連続当選。安倍前首相とは初当選同期。外相、党国対委員長などを歴任。外相時代、前任者の辞任に伴い防衛相を1週間、異例の兼務。祖父も衆院議員、宮沢洋一元経産相はいとこ。裕子夫人との間に3男がいる。広島1区。血液型AB。