自民党総裁選は、29日に投開票され、菅義偉首相の後継が決まる。岸田文雄前政調会長と、河野太郎行革相の接戦は最終盤で岸田氏がリード、高市早苗前総務相が猛追し、野田聖子幹事長代行が一発逆転を狙う情勢だ。1回目の本選で過半数を獲得する可能性は低いとみられ、2012年以来、5度目の決選投票が確実視されている。

岸田氏が優位を広げた。この日、竹下派(51人)の会長代行の茂木敏充外相は自身の岸田氏支持と「(派閥も)大半が岸田支持でまとまった」と表明した。総裁選中に竹下亘会長の死去もあったが、流れは岸田氏へと傾きそうだ。

岸田派(46人)を軸に最大派閥の細田派(96人)や河野氏が所属する麻生派(53人)からも支持は膨らむ。朗報を得た岸田氏は派閥会合で「開票が終わるまで決して予断は許されない。ひとつのミスが、失言が勝敗に大きく影響する」と引き締めた。

河野氏は議員票が伸び悩む。「岸田氏は140人以上が確実、河野氏100人前後」と読む陣営もある。この日、河野氏は支持候補を明確にしない二階派(47人)会長の二階俊博幹事長を訪問し、支援を要請したとみられている。

本選は議員票(382票)と党員・党友票(382票)を合わせた計764票で争われる。過半数を獲得できなかった場合は上位2人による決選投票となる。決選投票では、議員票は同じだが、党員・党友票は都道府県別の47票となり、議員票が大勢を決める。仮に岸田氏と河野氏の決選投票となった場合に高市氏、野田氏への票の多くが岸田氏に流れると予測されている。12年には、本選トップの石破茂元幹事長が、決選投票では安倍晋三前首相に敗れるなど、本選とは別次元の戦いとなる。

高市氏は国会議事堂にほど近い神社を参拝し、必勝を祈願した。その直前に二階氏を訪問し、支持を訴えたとみられる。二階氏の地元和歌山特産の「みかん」の手土産に高市氏は笑顔を見せ、他陣営は「票を回してもらったのでは」と警戒する。票奪取か、みかん(未完)のままか。決選投票進出へのカギを握る。野田氏は超党派議連の総会に出席し、「総裁選で4キロ痩せた」と笑顔を見せた。4陣営の場外戦は投開票の直前まで繰り広げられる。

【大上悟】