岸田文雄首相は1月31日の衆院予算委員会の質疑で新型コロナウイルスの感染拡大対応し、東京都から緊急事態宣言発令の要請があった場合について「現時点では検討していない」と否定的な認識を示した。この日、東京都は新規感染者数は1万1751人が確認された。25日から1週間連続で1日あたり1万人超となり、病床使用率は49・2%で、都が緊急事態宣言の要請を検討する基準とした50%が目前に迫っている。

現在、34都道府県からの要請を受けて、まん延防止等重点措置が適用されているが、コロナ対応の病床使用率が上昇し、一般医療との両立が困難となっている地域が急増している。立憲民主党の江田憲司氏から緊急事態宣言の発令について「自治体から要請があれば認めるのか」と問われた首相は「まん延防止等重点措置の効果も見極めて総合的に判断する。少なくとも現時点では緊急事態宣言の発出は政府としては検討していない」と明言した。首相は江田氏から重ねて宣言発令の可能性を問われたが「政府として総合判断する」などと、「総合判断」を連発し、最後まで答弁を変えなかった。

東京都の小池百合子都知事は30日、緊急事態宣言発令の要請について「繁華街の夜の滞留人口は抑制されている。病床は重症、中等症など中身もあり、総合的に検討する」と慎重な構えを示していた。都の基準の重症者病床使用率は約5%にとどまっているが、31日の東京の感染者数は7日連続の1万人超えで、月曜として過去最多を記録するなど、感染は拡大を続けている。歯止めがかからなければ自治体からの声に得意の「聞く力」を発揮して方向転換するのか。コロナ対策と社会経済活動の両立を目指す首相が判断を迫られる。【大上悟】