大相撲夏場所(東京・両国国技館)千秋楽で敗れて、惜しくも初優勝を逃した平幕隆の勝(27=常盤山)の地元千葉県柏市で22日、パブリックビューイング(PV)が行われ、家族や友人、市職員らが躍進をたたえつつも無念の表情を浮かべた。

隆の勝が土俵脇に入場すると、「祈 目指せ初優勝 ガンバレ隆の勝」の横断幕を掲げ、大きな拍手で迎えた。佐田の海に立ち合いで食い止められ、すくい投げで4敗となると、会場は大きなため息に包まれた。横綱照ノ富士が負ければ4人による優勝決定戦の可能性があったが、最前列で見守った両親らの祈りは届かなかった。

両親は盛り上がりに感謝して、応援してくれた市民らに深く頭を下げた。父俊哉さん(60)は「緊張で固くなっていたのが画面で分かった。固くて固くてどうしようもなかったですね。突っ張らないし、脇も甘いし。心を鍛えないと」と相撲内容には厳しい一言。負けた瞬間は頭を抱えて天を仰いだ母雅代さん(60)は、10日目が終わった夜に隆の勝のもとを訪れ、整体師として体もケアしたという。「本人は本当に悔しかったと思う。『よく頑張ったね。経験を大きな財産に次だよ』と声をかけてあげたい」。来場所以降の悲願成就も願った。

場所前のゴールデンウイークには久しぶりに隆の勝を含んだ家族がそろった。自宅の庭で楽しんだバーベキューは隆の勝にとっては激励会。きょうだい6人で笑いあい、めいっ子たちと遊んで癒やされたことも原動力の1つとなった。母は「きょうだいの中で一番おとなしくて目立たない子だった」と性格を分析するが、唯一きょうだい喧嘩が絶えなかったのが、1つ年上の次女里佳さん(28)だ。里佳さんは「私がきょうだいで一番気が強くて、『性格を交換したらいい』とよく言われていました。ノブ(隆の勝の本名伸明)は優しいんです」。今では仲良しだが「当時はライバルですね」とニヤリ。体の大きさは歴然だったが「すねを狙うんです。太ももとかも。そうするとノブは、しびれをきらして負ける」。一緒にわんぱく相撲にも出場していたが「相撲はとったことないですね。寝技ありの総合格闘技みたいな感じ。戦う心とか足腰の強さは私との喧嘩のおかげかもしれないですね」と笑い、「横綱は目指していますけれど、もっと人間力もないといけない」とさらなる成長を願いつつ、たくましくなった弟を誇った。

コロナの影響で市主催のPVは、19年ラグビーW杯で事前合宿を柏市で行ったニュージーランド代表を応援する企画以来だ。参加した太田和美市長(42)も「結果は残念でしたが、熱く込み上げるものがありました」。同市スポーツ課の光井雄太さんも「市民の気持ちが1つになれるものが増えました」と継続的な応援を誓った。【鎌田直秀】