宮城県大崎市の鳴子温泉郷で就職が内定していたウクライナ人のキム・イリーナさん(33)が27日、おいのニキータくん(2)と成田空港に到着した。受け入れ先の建設会社「サンユー」(同県石巻市)佐々木清志社長(60)に出迎えられ、「やっと安全で落ち着いた環境の日本に来ることが出来た」と安堵(あんど)の表情。同社長が開業準備を進めている温泉施設「農民の家」で雇用予定だった10人のうち、最初の宮城避難が実現した。

イリーナさんは昨年末まで事前準備のために鳴子温泉で過ごし、一時帰国。今春に再来日予定だったがキーウの自宅マンションがロシアの爆撃を受けた。親戚を亡くし、兄とは連絡がとれないままだ。一時は地下シェルターで過ごしていたが、日本行きの申請のためにポーランドへ。1カ月以上かかって、ようやく認められた。「魚料理やみそ汁などのおいしい食べ物、親切な人にも出会えた。日本語を完璧にしたいですし、佐々木さんの会社で働き続けたい」と気持ちを強く持った。

自身の息子は義理の両親と過ごしており離れ離れとなってしまったが、「幼稚園などが開いていないので教育を受けられない」と、おいの将来も見据えて日本で一緒に過ごす決断をした。「日本語を習得することは彼の将来に役立つはず」。長旅の疲れを感じさせない元気いっぱいのニキータくんにハンバーグや海老フライを食べさせ、膝の上で眠りにつくとギュッと優しく抱き締めた。佐々木社長も「ようやくです。長かった。お盆くらいには開業させたい」と力を得ていた。【鎌田直秀】