藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)が永瀬拓矢王座の挑戦を初めて受ける、将棋の「第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第2局」(産経新聞社、日本将棋連盟主催)が15日、新潟市西蒲区「高志の宿 高島屋」で行われた。対局は午後7時21分、138手の激戦の末に後手の藤井が永瀬を下し、対戦成績を1勝1敗とした。第3局は7月4日、千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」で行われる。

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秒読みに追われながら、藤井が一撃必殺の手を放った。持ち時間は残り2分。55秒まで読まれ、慌てた手つきで駒台から銀をつまむ。116手目後手9七銀。少しマス目からズレながら置いた。永瀬玉の退路をたった一手で封鎖した。

「一手バッタリ」に永瀬が目をむいて盤を見つめる。続いて左手で頭をかく。流れを引き寄せると投了に追い込み、対永瀬戦4連敗を阻止した。

角換わり腰掛け銀で始まった対局は、開始66分後の午前10時6分、藤井が仕掛けて激戦となった。「思わしい攻め方が分からなかった。自信がないと思っていた」と言う。正午から1時間の昼食休憩を除けば終局まで約8時間、お互いに押し引きを繰り返す。「まったく分かっていなかった」という勝負手で、白星をたぐり寄せた。

負ければかど番に追い込まれる一戦で、踏ん張った。この日の勝利で通算269勝54敗としたが、テレビ棋戦の事前収録も含めて公式戦の連敗は7回。タイトル戦初の連敗を免れた。

来週22日には渡辺明名人への挑戦権を争うA級順位戦の初戦、佐藤康光九段戦がある。日本将棋連盟が名古屋市に開設する「名古屋将棋対局場」のこけら落としとして、用意された。今期A級に昇級したばかり。「1年かけて戦っていくうえで、1回戦は大きな意味を持つ」と先週10日に同市内で行われた祝賀会でも話していた。ホーム戦を前に勢いがついた。

「ここまで2局、押されている。第3局以降、内容を良くして戦えるようにしたいと思います」。

高島屋は1996年(平8)の第67期棋聖戦5番勝負第5局で、当時の7冠すべてを保持していた羽生善治棋聖が三浦弘行五段(いずれも当時)に敗れ、6冠に後退した歴史的舞台でもある。26年後、将棋界で終生語り継がれるような歴史的一手で、藤井が大きな勝利をつかんだ。