藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が年度内6冠へ望みをつないだ。8日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた、渡辺明棋王(名人=38)への挑戦者を決める第48期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント(挑決T)敗者復活戦で午後7時13分、128手で先手の羽生善治九段(52)を下した。藤井は敗者組から挑戦者決定戦に進出した。

負けられない一戦をモノにした。角換わりから水面下までの読み合いが続く。「激しい展開でどうなっているのか、きわどいと思って指していました」。盤の向こうにいるのは、来年1月からの王将戦7番勝負と挑戦者となった羽生。前哨戦の意味合いも強かった。「後手9八桂成(106手目)で行けそうかなと思いました」。最後までしっかり読んで、振り切った。

3日には竜王戦7番勝負第6局で広瀬章人八段(35)を下し、4勝2敗で初防衛を果たした。今年1年、タイトル戦では王将戦が渡辺、叡王戦が出口若武六段(27)、棋聖戦が永瀬拓矢王座(30)、王位戦が豊島将之九段(32)、竜王戦で広瀬と、まったく違う棋士と頂上対決をこなして5冠を堅持してきた。

棋王戦は、挑決Tベスト4以上は2敗で失格という独自のシステム。挑決T優勝者として待ち構える佐藤天彦九段(34)と藤井が、年内に同所で挑戦者決定戦変則2番勝負を行う。1勝のアドバンテージがある佐藤が勝てば、スンナリ挑戦権獲得。藤井が挑戦権を獲得するには佐藤に2勝するのが条件となる。第1局に勝った場合、年内に再戦が予定されている。

敗者組は、負ければおしまいというサバイバル戦。敗者復活の初戦で伊藤、次いで羽生を下し、はい上がってきた。「第2局まで持ち込んで、盛り上げられるように頑張りたいと思います」。その先の年度内6冠まで見据え、抱負を語った。【赤塚辰浩】