藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が渡辺明棋王(38)に挑戦する、将棋の第48期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第1局が5日、長野市「長野ホテル犀北館」で行われた。午前9時から始まった対局は、午後7時1分、125手で先手の藤井が勝ち、初の棋王奪取と史上最年少6冠に向け、好発進した。第2局は18日、金沢市「北國新聞会館」で行われる。本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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藤井竜王がすごい手を連発しての快勝でした。駒組みの段階で5筋の自陣に打った角。

ほかの棋士なら、はなから考えませんよ。受けの手ですもの。これが後で3筋に上がって攻防に効いてくるのですから、藤井竜王の歴代ベスト3に入る絶妙手です。

それと、2筋に歩を打つのが常識と思われていた局面での桂打ち。超過激ですよ。桂交換を強要した後、持ち駒の歩を2、3筋に打ってペースをつかみました。

最後は、相手の攻めを逆用して7筋の守備金を攻撃に参加させた手。力強かったです。1局を通して、そんなに大差にはなっていないのですが、随所に光る手を見せての快勝でした。

渡辺棋王は、先手番となる第2局に期待しましょう。興味深いのは、今月1日のA級順位戦で、後手番の藤井竜王が永瀬王座にいいところなく敗れたことです。先手番23連勝の棋士でも手に負えない将棋が、実戦で出ました。対藤井戦で先手になる棋士は、永瀬王座の棋譜を引き合いに出し、有力な作戦として選択するかもしれません。渡辺棋王が次のこと(名人防衛戦)も見越して、どんな戦型を選ぶのか注目しています。