全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ「2023年本屋大賞」が12日発表され、凪良(なぎら)ゆうさん(50)の「汝(なんじ)、星のごとく」(講談社)が大賞を受賞した。凪良さんは映画化もされた「流浪の月」でも20年に受賞しており、恩田陸さんに続き2人目の2度の栄冠となった。

凪良さんは受賞スピーチで、コロナ禍だった前回に触れ「この会場にすらたどりつけない受賞者になってしまい、その時、応援してくださった書店員さんに直接お礼が言えなかったこと、同じ場所で喜びを分かち合えなかったことが、この3年間ずっと悔いになって残っていました」と振り返った。今作の刊行で各地の書店を巡った時に「ずっと応援していました」と声をかけられたことなど、書店員との交流を涙ながらに紹介。「今日再び受賞者としてこの場に立っていることが夢のようにうれしくて、でも全然夢なんかじゃなく、物語を愛する書店員お1人お1人の力がつくってくださった現実です」と感謝した。

凪良さんは滋賀県生まれ。06年「恋するエゴイスト」でデビュー。

今作について、講談社は「風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた2人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語」などと紹介している。

本屋大賞は20回目。今回は21年12月1日~昨年11月30日に刊行された小説が対象。2位以下は以下の通り(※敬称略)。

▼<2>安壇美緒「ラブカは静かに弓を持つ」(集英社)

▼<3>一穂ミチ「光のとこにいてね」(文芸春秋)

▼<4>呉勝浩「爆弾」(講談社)

▼<5>青山美智子「月の立つ林で」(ポプラ社)

▼<6>小川哲「君のクイズ」(朝日新聞出版)

▼<7>夕木春央「方舟(はこぶね)」(講談社)

▼<8>町田そのこ「宙(そら)ごはん」(小学館)

▼<9>寺地はるな「川のほとりに立つ者は」(双葉社)

▼<10>結城真一郎「#真相をお話しします」(新潮社)

翻訳小説部門1位には、クリス・ウィタカーさん著、鈴木恵さん訳の「われら闇より天を見る」(早川書房)が選ばれた。

昨年の受賞は、逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)で、累計50万部を超えている。