藤井聡太竜王(名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖=21)が8冠全制覇を目指して永瀬拓矢王座(30)に初めて挑戦する、将棋の第71期王座戦5番勝負第1局(日本将棋連盟、日本経済新聞社主催、東海東京証券特別協賛)が8月31日、神奈川県秦野市「元湯陣屋」で行われた。午前9時から始まった対局は、午後9時11分、後手永瀬が150手で勝ち、藤井は黒星発進となった。第2局は9月12日、神戸市「ホテルオークラ神戸」で開催される。

藤井のギアが上がったはずだった。午後5時から30分間の夕食休憩後、先手5二角成(63手目)と成り捨てて、と金もできた。そこから一気に攻め込むはずが、金、と金、銀、桂が4~5筋で渋滞し、攻めのスピードが遅くなる。「角を切って、と金を作って進んでみると、攻め駒が少なくて良い指し方ではなかった」と振り返った。

永瀬の強烈な反発に鋭い終盤力が鳴りをひそめる。わずかなリードを保っていたはずが後退する。うまくいかない局面に天井を見上げたり、腕組みしたままガックリうなだれるなど、旗色が悪い時に見せるせわしないしぐさが物語っていた。

研究会仲間であり、お互いに手の内を知り尽くしている永瀬の粘り腰に屈した。本年度12連勝(未放映のテレビ棋戦を除く)していた先手番で、初めて黒星を喫した。タイトル戦の先手での黒星は、今年3月の棋王戦第3局以来となる。

昨年の棋聖戦5番勝負で、永瀬とタイトル戦として初対戦したときも開幕戦を落とした。そこから3連勝して棋聖を防衛。過去のタイトル戦で連敗はない。

「早くも厳しい状態にしてしまったんですが、できる限り良い状態で対局に臨んで熱戦にできるように頑張りたいと思います」。初の王座奪取と8冠制覇に向け、巻き返す。【赤塚辰浩】

【動画】王座戦第1局、投了の瞬間… 藤井聡太が先手番で敗れた