西村明宏環境相は8日の閣議後会見で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス、本部パリ)が、東京・明治神宮外苑の再開発事業の撤回を求めた「ヘリテージ・アラート」を発令したことへの受け止めを問われ「よりよい環境保全の観点から、さまざまな課題がある中、環境に最大限配慮を行った事業の実施を期待したい」と述べた。

イコモスは「ヘリテージ・アラート」を再開発の事業者や東京都のほか、岸田文雄首相や西村環境相を含む日本政府にも送付。西村氏は、要請書はまだ手元に届いていないとした上で「こうした樹木を含めた都市緑地は、生物の生息や生育の場として大変重要だし、都市住民にも身近な自然とのふれあいの場として重要だ」と述べるにとどめた。

「ヘリテージ・アラート」は、貴重な文化的資産が危機にひんしている場合に緊急要請として出される。今回の神宮外苑についてイコモスは7日に発令した要請書の中で、大量の樹木が伐採・移植されることで「100年にわたり育まれてきた森は、完膚なきまでに破壊される」と指摘。東京都に都市計画決定の見直しや、環境影響評価(アセスメント)の再審議を行うべきと求めているほか、国に対して「東京都のみの問題とすることなく、適切な施策の適用を、さまざまなステークホルダーとの協働のもとで推進すべき」と指摘している。