藤井聡太王将(竜王・名人・王位・棋聖・棋王=23)に永瀬拓矢九段(33)が2期連続で挑戦する将棋のALSOK杯第75期王将戦7番勝負第6局が18、19の両日、名古屋市「名古屋対局場」で行われ、先手の藤井が永瀬を下した。シリーズ対戦成績を3勝3敗のタイに戻し、5連覇へ望みをつないだ。藤井は2日制タイトル戦19度目の登場で自身初のフルセットとなり、逆転防衛を目指す。運命の第7局は25、26日に大阪府高槻市「関西将棋会館」で行われる。
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がけっぷちまで追い込まれた藤井が底力を発揮した。大きな窓越しに名古屋城が望める地元決戦。後がない一局で堂々とした指し回しを披露した。エース戦法の角換わりを選び、永瀬の研究手にも長考でしっかり読みを入れて対応。序盤でつかんだ優位を中盤で拡大して快勝した。
終局後、藤井は「2筋で戦いになったときの判断が非常に難しい将棋だった」と振り返った。年明けから始まった王将戦は第4局までに1勝3敗とされたが、そこから2連勝でフルセットに持ち込んだ。
20年7月、棋聖で初タイトルを奪取してから快進撃を続けてきたが、今季は珍しく土俵際に追い込まれている。プロ10年目の大きな目標は「変化を進化に」。芸域を広げるために指し手に幅を持たせている途上で訪れたダブル失冠の大ピンチだった。
「大事なところでミス」「内容がよくない」。対藤井の研究を深める挑戦者に苦戦を強いられた。第6局で永瀬は30手目に意表を突く7筋の歩を突き出した。前例の少ない戦いに持ち込まれたが、相手の攻めをとがめて封じた。不調説の中、「らしさ」を取り戻した完勝譜となった。
将棋界では過去、1勝3敗からの逆転3連勝は4例しかない。
増田康宏八段の挑戦を受ける棋王戦5番勝負でも失冠の危機に立たされているが、第4局では持ち前の終盤力を発揮して2勝2敗のタイに戻した。2冠同時失冠の瀬戸際に変わりはないが、同時期に2つのタイトルを逆転防衛する異例の展開も見えてきた。
王将戦第7局は中5日で25日から始まる。「(振り駒で)先後どちらになるかわからないが、集中して頑張りたい」と表情を引き締めた。若き王者は、流れを五分に戻して大一番へ向かう。【松浦隆司】

