歴史的な一戦の裏側に迫る「G1ヒストリア」。皐月賞は13年の覇者ロゴタイプを取り上げる。

勝ちタイムの1分58秒0は当時のコースレコード。開業4年目だった田中剛調教師(62)は騎手、調教師を通じて初めてのクラシック制覇となった。エピファネイア、コディーノとの「3強」対決を力でねじ伏せ、一気の4連勝で頂点に立った。

13年の皐月賞を制したロゴタイプ(右端)。中央は2着エピファネイア、左端は3着コディーノ
13年の皐月賞を制したロゴタイプ(右端)。中央は2着エピファネイア、左端は3着コディーノ

3、4コーナーから外に持ち出しロングスパートをかけた1番人気ロゴタイプが、2番人気エピファネイアの背後にぴったりとつけた。M・デムーロ騎手の手綱がしきりに動いた。手応えは劣勢でも脚色はむしろ勢いを増した。

田中剛師 ヨーイドンでは分が悪い。ずるい面もある馬で、早めに追い出した方がいいなと。長くいい脚を使える強みを、ミルコが最大限生かしてくれました。頑張ってくれたロゴタイプ、吉田照哉代表はじめ社台ファーム、グループの方々への感謝の気持ちが強いです。

田中剛調教師(22年5月11日撮影)
田中剛調教師(22年5月11日撮影)

2着エピファネイアとの追い比べを制した。内を突いた3着の3番人気コディーノも寄せ付けなかった。エピファネイアは角居厩舎、コディーノは藤沢和厩舎の所属。東西の有力トレーナーが送り出した素質馬を撃破した。10年10月に開業してから4年目。田中剛厩舎には、大きな自信になる皐月賞制覇だった。

皐月賞後は我慢の日々が続いた。2、3着の惜しいレースはあったが、勝ち星に見放された。「終わったという声も聞こえてきて『ふざけんな』と思ってました。どうにかしなきゃと」。師は自ら馬にまたがる際には常に緊張感を持ち、神経をとがらせてきた。調教で試行錯誤を重ね、ロゴタイプの復活へ力を注いだ。

16年6月の安田記念。「負けたら負けたでいいから、ハナに行ってほしい」。元騎手の目線で周りの出方を考慮しながら、コンビ3戦目の田辺騎手に思い切った指示を与えた。作戦通りに主導権を握ると、後続を寄せ付けず逃げ切った。「とうとうよみがえってくれたなと。やったなと」。皐月賞から3年2カ月、17戦目。強さを改めて証明できたことが何よりうれしかった。

引退後は種牡馬になった。産駒で勝利も挙げた。「他の厩舎の馬でも、身内が頑張っている感じがしてね。言葉では言い表せない。感謝してもしきれない存在です」。酸いも甘いも一緒に味わったロゴタイプへの大きな愛情は、次の世代にも注がれている。【井上力心】

◆ロゴタイプ 2010年3月10日、北海道千歳市の社台ファーム生まれ。父ローエングリン、母ステレオタイプ。黒鹿毛、牡。馬主は吉田照哉氏。美浦・田中剛厩舎。通算成績は30戦6勝(うち海外2戦0勝)、G1は12年朝日杯FS、13年皐月賞、16年安田記念の3勝。13年スプリングSを含め重賞は4勝。21年に初年度産駒がデビューした。