さすがはユタカ、というレースだった。

ドウデュースの武豊騎手は、スタートからポジションを取りにいく感じではなく、すぐに下げて後方3番手。前半は折り合いに専念し脚をためる形に徹した。弥生賞(2着)で好位付けの競馬をして敗れてから皐月賞もダービーも、京都記念も控えて結果を出している。このスタイルがドウデュースには一番合う。

最初のスタンド前はヒートオンビート、ディープボンドの後ろ。少し行きたがるパートナーを、前に壁を作って我慢させた。タイトルホルダーの前半1000メートルは60秒4。離れた2番手以降は1秒以上遅いスローペース。勝負どころで一気に流れが速くなるのは目に見えている。外に馬を置かず、いつでも動けるポジションを確保したあたりもソツがない。

さらに絶妙だったのが動きだしのタイミングだ。壁の外へ出して進出を開始したのは、残り800メートル過ぎ。常識的には少し早いが、一気に上位をのみ込むとスルーセブンシーズの前へ。大外まくりから徐々に内へ進路を変え、4コーナーで大外へ振られるロスを軽減した。

スターズオンアースを射程圏にとらえたところで一呼吸、ふた呼吸置いたあたりも心憎い。その分、直線の坂を上がって突き放すことができた。仕掛けのタイミングがあれより少しでも早ければ体力を消耗し、遅ければ馬群の外へはじき出される。ラップ的にも12秒0→11秒7に上がるぎりぎりのところ。まさに計ったかのようなゴーサインだった。

抑える時はポジションを気にせず、動く時は迷いなく一気に。メリハリの利いた手綱さばきが、ドウデュースを復活に導いた。

最終コーナーを駆け上がるタイトルホルダー(左から3頭目)と横山和生騎手、右はドウデュースと武豊騎手(2023年12月24日撮影)
最終コーナーを駆け上がるタイトルホルダー(左から3頭目)と横山和生騎手、右はドウデュースと武豊騎手(2023年12月24日撮影)