ダービーには「青葉賞組は勝てない」というジンクスがある。重賞に昇格した94年以降、確かに勝利はないが2着は6回あり、軽視は禁物だ。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、青葉賞を好時計勝ちしたプラダリア(牡3、池添学)に注目した。東京2400メートルで生きる「持久力」+「瞬発力」を検証する。

■プラダリア11秒台3連発ハイレベル青葉賞差し切り

今年の青葉賞はレベルが高い。そう感じたのは前半のラップタイムだ。ディライトバローズが飛ばしたこともあるが、前半1000メートル通過は58秒9。過去5年と比較しても、17年=59秒7、18年=60秒8、19年=59秒9、20年=60秒4、21年=60秒5より、かなり速い前傾ラップだった。

離れた5番手を追走したプラダリアは、ある程度落ち着いたポジションとはいえ、前との差を詰めるために脚を使う必要がある。しかもラスト3ハロンは11秒7、11秒9、11秒9と速く、体力を消耗しながらも切れる脚が要求される難しい競馬。これを差し切った価値は大きい。

4角では先頭から7、8馬身。2番手のロードレゼルとも5馬身差があった。これを400→200メートルで一気に差を詰め、先頭に並びかけた。ここでの同馬の推定ラップは11秒1。上がり3ハロン34秒2はエターナルビクトリに次いで2位だが、トップギアに入った時の加速力は目を見張るものがある。

池添学師が「追えばビュンと伸びる」と話した瞬発力を、初めての重賞で証明してみせた。先頭と10馬身近い差を詰めながらゴールまで伸び続けた「持久力」に、レヴァンジルを並ぶ間もなくかわした切れは、皐月賞組と比較しても見劣りしない。

中3週で2度の長距離輸送になるが、前走をプラス体重(2キロ増)で乗り切れたのは収穫だ。これなら移動に気を使わなくて済む。折り合いに不安がなく、長く脚を使い、一瞬の切れもある。「青葉賞組は勝てない」。このジンクスを破る可能性を秘めた馬だ。

■両方が必要

【ここが鍵】

先週のオークスを見ても、東京2400メートルはスタミナと瞬発力が必要になる。どちらかだけでは通用しない。スターズオンアースは好位の後ろで流れに乗り、上がりはメンバー最速の脚33秒7で差し切った。いかに長距離の流れに対応し、脚をためて爆発させるか。ここが大きなポイントになる。

青葉賞組は12年フェノーメノ(2着)から連対してないが、オープン特別の時を含めると86年グランパズドリーム、91年レオダーバン、94年エアダブリン、02年シンボリクリスエス、03年ゼンノロブロイ、06年アドマイヤメイン、11年ウインバリアシオン、12年フェノーメノの8頭が連対。若駒だけにやはり2400メートルの経験は無視できない。

■ロードレゼル根性見せた

<青葉賞>

青葉賞2着のロードレゼルは、スタンド前で先頭に立ったところを、ディライトバローズに絡まれて向正面まで気負っていた。決してリズム良く走れたわけではないが、それでも直線は差し返す根性を見せて、プラダリアとは半馬身差。まだ幼くて課題も多いが、ポテンシャルは高い。

■マテンロウオリオン自在性魅力

<NHKマイルC>

NHKマイルC2着のマテンロウオリオンは、自在性が魅力だ。スタートが遅く後方からの競馬になったが、流れ次第で前にもいける。ダイワメジャー産駒で2400メートルは微妙だが、昆厩舎はこのローテで08年のディープスカイを勝たせており、そのあたりの見極めはしっかりしている。

■デシエルト大駆けに注意

<皐月賞>

皐月賞惨敗組ではデシエルトの巻き返しが怖い。スタートでつまずいてリズムを崩したのが敗因だ。若さも出たが、逃げ馬にはよくあること。若葉Sのように気分良くいけば簡単には止まらない。前走は2番手で折り合ったように、レースぶりにも進境を見せている。人気落ちで大駆けに注意。