今村聖奈騎手に続け! 今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は、障害専門騎手という異例のルーキー・小牧加矢太騎手(25=音無)の「今」に迫った。20年全日本障害飛越選手権で優勝するなど馬術界の頂点を極めた経歴を持つジョッキーは、今年JRAで27戦5勝。今夏さらなる飛躍を誓う“障害界のプリンス”の心境を、マイクこと藤本真育記者が聞いた。

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苦労の先に喜びがある-。新人・小牧加矢太騎手は現在5勝を挙げ、障害騎手リーディングでは5位だ。小牧太騎手の息子として、馬術の道で数々の賞を取った期待のホープとしてデビューから4カ月。今、何を思うのか。

「以前はやみくもに乗るだけでしたけど、今は自分で作ったそれぞれの馬に対しての目標ができたり、レースでの改善点に取り組むことができます。最初の頃より充実していますね。自分の頑張りが直接的に結果につながりますし、毎日が面白いですよ」。

そう思えるのも、数々の試練を乗り越えてきたからだ。デビュー前、馬をゲートから出したのは試験を含めてわずか5回。レースで大事なスタートの経験不足は否めず、競馬のペースで騎乗したこともなかった。実戦体験豊富な先輩騎手との差は、大きかった。さらに、デビュー3、4戦目で2度の落馬も経験するなど、悔しい思いもした。

「最初からうまくいくなんて思っていなかったですけど、あの(落馬した)時はしんどかったですね。肉体的にも精神的にも。でも、終わったことは仕方がない。レース映像を見てどういうふうに落馬しているか、落馬にも特徴があるのでそれを改善する。落馬で経験したことを他のレースで生かしています」。

次の1勝のため、先輩に追いつき追い越すため-。1秒も無駄にせず努力を続ける。多いときは朝から7頭ほど調教に騎乗。終了後、500ミリリットルのスポーツドリンクを一気に飲み干す姿に、ハードワークぶりがうかがえる。調教後には、トレセン内でレース映像を振り返り、騎乗フォームについて福永騎手、川田騎手や同年代の坂井騎手にアドバイスを求めることもある。

「最後追えないのが課題ですけど、こないだ瑠星くん(坂井騎手)から馬の動かし方のアドバイスをもらって、あぶみを2センチ短くした。それだけで乗り方が全然違う。意識して調教に乗ってるけどフォームは変わってきたと思います」。

日々の進化を糧に目指すはさらなる高みだ。この夏は30日の新潟JS(J・G3、芝3250メートル)はヴァーダイト(牡5、音無)、8月27日の小倉サマーJ(J・G3、芝3390メートル)はシャイニーゲール(牡8、五十嵐)と重賞2鞍に騎乗する予定。今村聖奈騎手に続く新人重賞初Vへ。「しっかり(タイトルを)ものにできるように頑張ります」と意気込む。障害界のプリンスの挑戦を応援したい。【藤本真育】

◆障害重賞最短V騎手 障害重賞導入後の99年以降、99年6月12日の東京ハイJ(J・G2)をレガシーロックで制した白浜雄造騎手の1年3カ月6日が最短。小牧加騎手が新潟JSで勝てば4カ月12日。デビュー年障害重賞Vは史上初。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)

7月10日、福島1Rの障害未勝利戦をデストロイで勝ち笑顔をみせる小牧加騎手
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