ルメール騎手にしては珍しく、激しいガッツポーズでした。今年初めてのG1勝利ですし、難しいレースをうまく乗れた喜びもあったのかもしれません。名手の名手たる騎乗でした。

直線力強く抜け出したスターズオンアースとルメール騎手がオークスを制した(撮影・酒井清司)
直線力強く抜け出したスターズオンアースとルメール騎手がオークスを制した(撮影・酒井清司)

最大のポイントは1コーナーでした。大外18番枠から、いかにロスを少なくするか。ラチから5頭分も、6頭分も外を回ってしまうと、必ず最後の脚に響いてきます。ルメール騎手はスターズオンアースを五分にスタートさせると、じわじわと前へ、内へと導きます。1コーナー通過時はちょうど中団で、ラチから3頭目。完璧な入りでした。

1000メートル通過は1分0秒9。決して速くないペースですが、オークスはほとんどの馬が初距離のため、ペースにかかわらず、2コーナーから向正面で隊列が縦長になります。そうなれば外を回る不利は少なくなりますので、やはり1コーナーが鍵でした。

東京11R、バンザイで検量室に凱旋したルメール騎手(撮影・酒井清司)
東京11R、バンザイで検量室に凱旋したルメール騎手(撮影・酒井清司)

最後の直線は逆に、外枠が功を奏します。馬場のいい真ん中から外へ出すのに苦労しませんでした。すぐ前のスタニングローズを目標に、ステッキが数発入ったところで手前を替えて、ギアはトップに。上がりは出走馬最速の33秒7。完璧なエスコートで、桜花賞馬の高い能力を余すところなく引き出した完勝でした。

観客の応援にガッツポーズで応えるC・ルメール騎手(撮影・丹羽敏通)
観客の応援にガッツポーズで応えるC・ルメール騎手(撮影・丹羽敏通)

一方の1番人気サークルオブライフは、まさかの12着に終わりました。サウンドビバーチェの放馬により発走時刻が遅れる間、多くのファンの前で輪乗りをする時間がテンションを高めた印象でした。ゲートの出も、タイミングも良くなかったですし、挟まれる形で1コーナー通過は最後方。勝ち馬とは対照的で、流れを考えても、あの時点で勝ち負けに加わることは難しくなりました。ただ、力負けではなく、不運が重なった結果ですから、次戦以降の巻き返しを期待します。

2着スタニングローズは陣営が長距離適性を見越し、桜花賞をパスしたことが好結果につながりました。同じ高野厩舎の3着ナミュールは、適距離ではない中で、桜花賞10着の悔しさを少し晴らしました。(JRA元調教師)