地方競馬の22年度第2回調教師・騎手免許試験新規合格者が11日、発表された。ばんえい競馬で今井千尋厩務員(22)が騎手に合格し、史上4人目、現役2人目の女性騎手が誕生した。

騎手は計3人が合格し、調教師では通算2626勝の松田道明騎手(59)が合格した。ホッカイドウ競馬ではコスモバルクでシンガポール航空国際C(国際G1)を制すなど活躍した五十嵐冬樹騎手(47)が合格した。12月1日に免許が交付される。

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会見に臨んだ今井が、少し照れ笑いを浮かべた。受験回数を問われ、「6回目です」と控えめに答えた。幼少時から帯広競馬場内の、父今井茂雄厩舎で育ち、17歳から騎手試験にチャレンジしてきた。この日午前、主催者を通じて吉報が届き、「結果が出るまで眠れなかった。何度も挑戦してきたので、本当にうれしいです」と、笑顔を見せた。

155センチ、50キロの小さな体に、ばんえいへの思いが詰まっている。小学低学年で草ばんばに出場していた。「そのころから騎手になりたいと思うようになりました」。サラブレッドの生産を行う静内農高へ進学したが、ばんばへの思いは募る。帯広に戻り父の厩舎で厩務員として働いた。

ばんえい騎手の重量は77キロで統一されており、体重で及ばない分は重りをソリに積んで調整する。今井は27キロの重りを積んで臨むことになる。父茂雄師は「女の子だし、力も男性より劣る。でも、自分でなりたくて選んだ道。今は騎手も若いうちから騎乗機会があるからね」と激励する。今回の試験の合否で騎手は21人になったが、まだ少ない。竹ケ原茉耶(40)以来17年ぶりに誕生した女性騎手へ、期待も注目も集まる。

ばんえいへの道は、生まれたときから導かれていた。生まれは00年、旭川市。当時は帯広、旭川、岩見沢、北見の4市開催で、父茂雄師は「新十津川に自宅があって、北見に移動しているときに、母親が産気づいてね。旭川の病院で生まれたんだ」と振り返る。免許交付を経て、デビューは12月10日以降。「いろいろな人の期待に応えたい」と、その日を心待ちにする。【大滝貴由樹】

○…騎手には今井のほかに現厩務員の小野木隆幸(39=大友)と中村太陽(19=今井)が合格した。小野木は会社員などを経験後、厩舎に入り6年目。4度目の受験で突破し「今回が最後と思っていました。自分を見て、同じ世代の人が頑張ろうと思ってくれたらうれしいです」。初受験で合格した中村は「実家が生産者で馬主。みんなの期待に沿えるよう頑張りたい」と抱負を述べた。