2023年度のJRA新規調教師免許試験の合格者が8日、JRAから発表され、ダービー3勝の名手・福永祐一騎手(45)が合格した。これにより、来年の2月末をもって騎手を引退することになる。

今年もここまで、カフェファラオでフェブラリーSを、ジオグリフで皐月賞を制してG1・2勝。一昨年にはコントレイルで史上3頭目となる無敗3冠を達成するなど、日本競馬界をけん引してきた名手の1人だ。先週終了時点でG1・34勝を含むJRA通算2613勝を挙げるトップジョッキーの騎乗が、あと3カ月足らずで見納めとなる。

デビュー27年目-。名手がムチを置く。調教師を志したのは今年の初めだった。

「騎手を続けるモチベーションを調教師になる魅力が上回った。騎手として一昨年がキャリアハイ(JRA134勝)だったように何の不安もなかったし、モチベーションが下がったわけではないよ。ただ、新しい発見をすることが少なくなっていたからね。調教師の話を聞いていると、いろいろ発見があって面白そうだったし、調教師になりたいという思いが強くなった。だから、本格的に勉強を始めたんよ」

やるからには今年一発で受かる。そう心に決め、2月末から中学生以来の試験勉強に取り組んだ。

「自分の勉強したいことだし、苦じゃなかったよ。しんどいとかはなかった」

栗東トレセンの事務所や自宅で勉強に励む日々。平日の午前中は調教騎乗、週末には競馬騎乗がある。そんなハードなスケジュールも抵抗なく受け入れた。

「人生は1度しかないからね。自分のやりたいことをやらないと」

前向きに取り組み、毎年数名しか合格しない狭き門を1回目で通過した。

父はかつて9年連続でリーディングジョッキーに輝くなど“天才”と呼ばれた洋一氏。その息子として生まれた祐一騎手もまた、父同様に常にトップを走り続けてきた。そんな中で下したトレーナーになるという大きな決断。来年3月からは調教師・福永祐一として、第2の人生が始まる。

◆福永祐一(ふくなが・ゆういち)1976年(昭51)12月9日、滋賀県生まれ。96年3月に栗東・北橋厩舎所属で騎手デビュー。初騎乗から2連勝するなどルーキーイヤーはJRA53勝を挙げ、87年武豊騎手以来、当時史上3人目となる新人50勝を達成し、JRA賞最多勝利新人騎手を受賞した。

2年目の97年東京スポーツ杯3歳S(キングヘイロー)でJRA重賞初制覇。99年桜花賞(プリモディーネ)で同G1初制覇。13年菊花賞(エピファネイア)で牡馬クラシック初制覇。ダービーは18年ワグネリアンで初制覇。20年コントレイル、21年シャフリヤールで史上3人目の連覇を果たした。ダービー3勝は単独2位。

海外では、01年香港マイルをエイシンプレストンで勝利。同馬では02、03年クイーンエリザベス2世Cも制した。05年にはシーザリオでアメリカンオークスを制覇。14年にはジャスタウェイでドバイデューティフリーを勝利している。

今年10月には岡部幸雄元騎手、武豊騎手、横山典弘騎手に次ぐ史上4人目のJRA通算2600勝を達成。12年連続の年間100勝というJRA最長記録は継続しており、今年は現在96勝で、記録更新の13年連続年間100勝まであと4勝としている。

父は「天才」と称された福永洋一元騎手。競馬学校の同期には和田竜二騎手をはじめ、JRA初の女性騎手3人がいて「花の12期生」と呼ばれている。