競馬やアニメファンの域を超えて注目を集めるゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」がきょう24日、リリースから2周年を迎えた。今回は昨年有馬記念に続く「ウマ娘」特集第2弾、「ウマ娘×ニッカン 重賞ヒストリア特別編」として、98年中山記念で重賞初勝利を挙げたサイレンススズカを取り上げる。主戦の武豊騎手(53)が「ウマ娘」でも人気の快速馬を振り返った。【取材・構成=太田尚樹、協力・Cygames】

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競馬史を塗り替え続けるレジェンドにとって、忘れられない1頭がいる。栗毛を輝かせ「誰もいない先頭の景色」を求めて走り続けた独走の天才。そう、サイレンススズカだ。幾多の栄光をつかんできた武豊騎手の両手に、その感触は今も残っている。

「すごくポテンシャルの高い馬で、もしあのまま元気だったら、種牡馬にもなって、競馬の歴史が変わっていたと思いますね。たくさんの名馬に乗せてもらったけど、その中でも印象の強い馬です」

四半世紀が過ぎて、その名は再び注目されている。ゲームやアニメなどのジャンルを超えてブームを巻き起こしている「ウマ娘」のキャラクターとして、2度目のブレークを果たした。その影響力には競馬界を代表する名手も目を見張る。

「すごく反響を感じますね。『ウマ娘』から競馬を知った若い人たちから『スペシャルウィークはどんな馬でした?』とか『サイレンススズカはどうでした?』とか聞かれることもあります。(競馬界への)効果は大きいと思いますよ」

自身がCMにも出演したゲームは、今日24日に配信開始から2周年を迎えた。それを伝え聞くと「ちょうど(26日の)中山記念でドーブネに乗るから頑張らないと」と意気込んだ。馬主は「ウマ娘」を制作したサイゲームスの親会社サイバーエージェントの藤田晋社長。自らの手綱でメモリアルウイークに花を添えるつもりだ。

その中山記念は、サイレンススズカが98年に重賞初Vを果たしたレースでもある。コンテンツの設定では「天才肌」「物静かでストイック」という性格だが、当時はまだ粗削りだった。

「難しい馬で、あの時はまだ手を焼いていましたね。ペースも厳しかったですから」

暴走に近かった。1000メートル通過58秒0、上がり38秒9という過酷なラップ。それでも後続を振り切り、単勝1・4倍の人気に応えた。すると次戦の小倉大賞典からは力みが消え、その逃走に磨きがかかった。そして異次元の速さと強さを見せつけていく。振り返れば中山記念は、覚醒への最後のプロセスだった。

現在は「ウマ娘」の影響で、故郷の稲原牧場にある墓碑にも多くのファンが訪れるという。時代も世代も超え、乗る者も見る者も魅了するスピードスター。ゲームの中でも、人々の心の中でも、今なお元気に駆け回っている。【太田尚樹】

◆サイレンススズカ 1994年5月1日、北海道平取町・稲原牧場生まれ。父サンデーサイレンス、母ワキア(母の父ミスワキ)。牡、栗毛。馬主は永井啓弍氏。栗東・橋田満厩舎から97年2月デビュー。98年天皇賞・秋までの通算成績は16戦9勝(重賞5勝、G1・1勝=98年宝塚記念)。総収得賞金は4億5598万4000円(海外308万3000円)。

◆「ウマ娘 プリティーダービー」 かつての名勝負や伝説のレース、偉大な記録を達成した競走馬の名前と魂を受け継いだ「ウマ娘」たちが織り成すクロスメディアコンテンツ。ゲームは、21年2月24日配信開始。プレイヤーがウマ娘のトレーナーとなり、二人三脚で夢の実現を目指す育成ゲーム。ダウンロードは無料。